塩分の過剰摂取が高血圧につながり得ることは周知の事実だが、実はそれ以上に危険かもしれない。新たな研究で、心不全(HF)高リスク群におけるナトリウムの過剰摂取は、HFの新規発症と関連することが示された。米ヴァンダービルト大学トランスレーショナル・臨床心血管研究センター(VTRACC)のDeepak Gupta氏らによるこの研究結果は、「Journal of the American College of Cardiology: Advances(JACC: Advances)」に3月18日掲載された。この研究では、米国南東部で進行中のSouthern Community Cohort Studyに参加している2万5,306人(年齢中央値54歳、女性63%)を対象に、食事からのナトリウム摂取とHF発症との関連が検討された。対象者には、従来、HFリスクが高いグループとされる黒人(69%)と年収2万5,000ドル(1ドル159円換算で約398万円)未満の低所得者(87%)が多く含まれていたが、研究開始時にHFのある参加者はいなかった。食事からのナトリウム摂取量は検証済みの質問票で評価し、HFの新規診断はメディケアやメディケイドの請求データから把握した。対象者の1日当たりの食事からのナトリウム摂取量は平均4,269±2,502mgであり、米国心臓協会(AHA)や米国政府の指針で推奨されている摂取量(2,300mg/日)を大きく上回っていた。追跡期間中央値9.8年の間に7,039人(27.8%)がHFを発症した。解析の結果、社会人口統計学的特徴、食事の質、摂取カロリー、運動、脂質異常症などを調整しても、食事からのナトリウム摂取量が1,000mg/日増えるごとにHFリスクが有意に8%上昇することが示された。さらに、高血圧、BMI、睡眠、冠動脈疾患を調整しても結果は同様であった。糖尿病患者でも同様の関連が認められ、食事からのナトリウム摂取量が1,000mg/日増えるごとにHFリスクは8%上昇した。さらに、人口寄与危険割合(PAF)の解析から、ナトリウム摂取量を4,000mg/日以下に低減することで、10年間でHFの6.6%(95%信頼区間3.6~9.6%)を予防できる可能性が示された。こうした結果を受けてGupta氏らは、「ナトリウム摂取量をわずかに減らすだけでも、この高リスク群におけるHFの負担を大幅に減らせる可能性がある」と述べている。ただし、ナトリウム摂取量を控えるという解決策は一見簡単に思えるものの、多くの人にとっては簡単ではないと研究グループは指摘する。なぜなら、低所得コミュニティでは、新鮮で低ナトリウムの食品を手に入れることが難しく、そうした食品を扱うより良い食料品店への交通手段も限られていることが多いためだ。研究グループは、「高リスクで資源の限られたコミュニティにおいて、食事からのナトリウム摂取量を下げるための多層的な公衆衛生戦略を実施するべきだ」と結論付けている。米国では、HFが年間42万5,000人以上の死亡に関わっており、事態は深刻だ。さらにHFは、人命への影響だけにとどまらず、経済的な影響も甚大だ。Gupta氏らは、ナトリウム摂取量を減らすことで、年間約20億ドル(約3180億円)の医療費削減が見込まれると推計している。(HealthDay News 2026年4月1日) https://www.healthday.com/health-news/cardiovascular-diseases/high-sodium-intake-may-trigger-new-heart-failure Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock