アルツハイマー病の進行に伴う脳の変化には性差があり、通常の診断で用いられている認知機能評価ツールでは、女性の変化が見逃される可能性があるようだ。健常者、軽度認知障害(MCI)患者、アルツハイマー病患者の脳MRI画像を用いた研究において、男性は健常からMCIにかけての初期段階から灰白質体積(GMV)が緩やかに減少し、その後も比較的緩やかに推移するのに対し、女性では初期段階ではGMVが保たれているものの、その後、アルツハイマー病発症までの段階で急激に減少する傾向が示された。米ジョージア州立大学物理学・天文学分野のMukesh Dhamala氏らによるこの研究の詳細は、「Brain Communications」に4月3日掲載された。研究グループは、「標準的なスクリーニング検査ツールであるMMSE(ミニメンタルステート検査)は、万人に同一の基準が該当することを前提としており、脳の変化の仕方が男女で異なることを考慮していない」と指摘している。この研究では、332人の脳の高解像度MRI画像を用いて、脳を82の領域に分けて解析し、健常状態からMCI、さらにアルツハイマー病へ至る過程における脳の変化を、GMVに着目して男女間で比較した。画像は、健常者(160人;男性77人、女性83人)、MCI患者(112人;男性55人、女性57人)、アルツハイマー病患者(60人;男性34人、女性26人)から取得されたものだった。その結果、アルツハイマー病へ至る過程で脳に生じる変化は、男女間で有意に異なることが確認された。女性では、健常とMCIとの間ではGMVに有意な変化は認められなかったが(P=1.000)、MCIとアルツハイマー病との間ではGMVが大きく減少した(P<0.001)。これに対し、男性では健常とMCIとの間でGMVが有意に減少し(P<0.001)、健常とアルツハイマー病との間でもGMVが有意に減少したものの、MCIとアルツハイマー病との間では有意な差は認められなかった(P=1.000)。MCIの女性では男性と比べてGMVが有意に大きかったが、アルツハイマー病ではこのパターンが逆転し、女性のGMVは男性と比べて有意に小さかった(P=0.015)。次に、MMSEと日常生活動作の評価尺度であるFunctional Activities Questionnaire(FAQ)に焦点を当てて脳の変化との関連を検討した。その結果、左上側頭回のGMVはMMSEと正の相関を、FAQとは負の相関を示し、GMVが大きいほど認知機能が高く、日常生活動作も維持されていることが示唆された。さらに女性では、GMVとMMSEおよびFAQとの関連が男性より広範な脳領域で認められた。以上の結果から、女性ではMMSEスコアが低下し始める頃には、すでに脳の損傷がかなり進んでいる可能性が示唆された。この「見かけ上の正常さ」は、受診や治療開始の遅れにつながる恐れがある。Dhamala氏は、「MCI段階でMMSEスコアが良好な女性でも、そのスコアだけでは捉えきれない脳の変化が進行している可能性がある」と述べている。研究グループは、今回の知見が個別化医療の実現に向けた基盤になると期待している。Dhamala氏は、「こうした研究の積み重ねにより、将来的には性別ごとの適切なスクリーニング時期が明らかになり、より早期で精度の高い介入につながることが期待される」と述べている。女性の場合、ホルモン変化が脳の健康に大きく影響する中年期や閉経後が、その重要な時期となる可能性がある。また、脳の健康を守るためには、知的・身体的に活動的でいること、血管リスクを管理すること、認知症や関連疾患の家族歴や遺伝的リスクについて医師に相談することが重要だとしている。(HealthDay News 2026年4月9日) https://www.healthday.com/health-news/neurology/alzheimers-tests-may-mask-risks-for-women Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock