関節周囲の脛骨骨折手術において、手術の最終段階である固定時に、創部にバンコマイシン粉末に加えてトブラマイシン粉末を投与しても、バンコマイシン粉末の単独投与と比較して、深部手術部位感染症のリスクは低下しないことが、新たな研究で示された。四肢外傷に関する臨床研究を行う多施設共同研究ネットワークであるMajor Extremity Trauma Research Consortium(METRC)が主導したこの研究の詳細は、「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に4月15日掲載された。論文の共著者でMETRCのメンバーである米メリーランド大学整形外科准教授のNathan O’Hara氏は、「外科医は日常診療において、この併用アプローチによる追加の効果を期待すべきではない」とニュースリリースで述べている。現在、医師は下肢骨折患者の手術において、深部手術部位感染症のリスクを低減する目的でバンコマイシンを局所投与する。バンコマイシンは、創部でよく認められるグラム陽性菌を標的とする抗菌薬であり、骨折後の感染症で問題となることの多いグラム陰性菌に対しては効果がない。本研究では、米国の39施設においてランダム化比較試験を実施し、関節周囲の脛骨骨折手術の固定時に、創部にバンコマイシン(1.0g)を単独投与した場合と、バンコマイシン(1.0g)にグラム陰性菌を標的とするトブラマイシン(1.2g)を併用した場合とで、深部手術部位感染症の発生率を比較検討した。関節周囲の脛骨骨折とは、膝関節に近い脛骨高原骨折と、足関節に近い脛骨天蓋骨折(ピロン骨折)のことである。1,660人の患者が、単独投与群または併用群のいずれかにランダムに割り付けられ、1,528人(平均年齢47.0歳、男性60.5%)が一次解析の対象とされた。その結果、併用群では753人中51人、単独投与群では775人中47人に深部手術部位感染症が発生した。182日間の発生率は、それぞれ7.4%、6.6%であった。ハザード比は1.11(95%ベイズ信用区間0.75~1.66)であり、両群間に統計学的に有意な差は認められなかった。また、バンコマイシンとトブラマイシン併用の方が優れている確率は29.7%と推定された。論文の責任著者であるメリーランド大学R Adams Cowley Shock Trauma CenterのRobert O’Toole氏は、「われわれは、アミノグリコシド系抗菌薬であるトブラマイシンを追加することで、グラム陰性菌感染が減少するという一般的な考えを検証した。しかし、その仮説は支持されなかった。バンコマイシンの単独投与はグラム陽性菌感染の予防として有効な選択肢であるが、トブラマイシンを日常的に追加することを支持するデータは得られなかった」と述べている。メリーランド大学医学部学部長のMark Gladwin氏は、「骨折手術後の感染症は再手術、抗菌薬の長期投与、治癒遅延、長期的な障害につながり得るため、感染対策は極めて重要である。本研究は、全国の多様な外傷センターを対象とし、高いプロトコル遵守率とフォローアップ率を伴うよく設計されたものであり、整形外科外傷における感染予防プロトコルに実践的な指針を提供している」とコメントしている。(HealthDay News 2026年4月20日) https://www.healthday.com/health-news/infectious-disease/extra-antibiotic-doesnt-reduce-infection-risk-during-surgery-to-fix-complex-fractures-trial-finds Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock