梅毒は、長期間治療されないまま放置すると、心血管系の健康に深刻な影響を及ぼす可能性があるとする研究結果が報告された。梅毒は大動脈瘤または大動脈解離などの血管イベントのリスクを約2倍に高め、さらに脳卒中や心筋梗塞の発症リスクも大幅に上昇させることが明らかになった。この研究の詳細は、「JAMA Network Open」に4月13日掲載された。論文の筆頭著者である米テュレーン大学医学部のEli Tsakiris氏は、「心血管疾患は米国における主要な死因である。最近の梅毒罹患者の増加傾向を考えると、この関連性は梅毒リスクの高い患者を診療する全ての医療従事者が認識すべき重要な問題だ」とニュースリリースで述べている。梅毒は、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)の感染により、主に性的接触を介して伝播する性感染症(STD)である。初期症状としては、感染部位(通常は陰茎、外陰部、膣など)に潰瘍が現れることが多く、進行すると、皮膚の発疹、湿潤部位の灰白色または白色の隆起、インフルエンザ様症状、脱毛、体重減少、頭痛、リンパ節の腫れなどが見られる。研究グループによると、米国では梅毒患者が急増しており、2018年から2023年の間に80%以上増加したと報告されている。梅毒は多くの場合、既存の抗菌薬で治療可能であり、ペニシリンの単回投与で治癒が見込める。一方で、未治療で放置すると、神経系、眼、耳、脳、肝臓などに深刻な障害を引き起こす可能性がある。梅毒が心血管系の合併症と関連することは以前より知られていたが、心血管イベントリスクに与える影響を独立して評価した大規模研究はほとんどなかった。今回の研究では、ニューオーリンズの3つの三次医療システムのデータを用い、8,814人の患者(平均年齢50.0歳、女性53.9%、梅毒患者1,469人、非梅毒患者〔対照群〕7,345人)を対象に、2011年から15年間にわたり、健康状態を追跡し、梅毒と心血管イベントとの関連を検討した。心血管イベントには、心筋梗塞、心不全、大動脈弁逆流症(大動脈弁閉鎖不全症)、心房細動、大動脈瘤または大動脈解離、脳梗塞、出血性脳卒中、末梢動脈疾患、静脈血栓塞栓症、および死亡を含めた。解析の結果、梅毒群は対照群と比較して、大動脈瘤または大動脈解離(ハザード比2.08、P=0.001)、脳梗塞(同1.53、P<0.001)、出血性脳卒中(同1.92、P=0.004)、末梢動脈疾患(同1.28、P=0.04)、心筋梗塞(同1.33、P=0.01)、および死亡(同5.80、P<0.001)のリスクが有意に高いことが示された。一方、心不全、心房細動、大動脈弁逆流症、静脈血栓塞栓症については有意な関連は認められなかった。ただし、この研究は観察研究であり、梅毒と心血管疾患の間の因果関係が証明されたわけではない。このことを踏まえたうえで、研究グループは、「それでも本結果は、長期的な梅毒感染に伴う心血管の問題が、これまで考えられていた以上に多い可能性を示している」と述べている。論文の上席著者であるテュレーン大学心血管トランスレーショナルリサーチ部門ディレクターのAmitabh C. Pandey氏は、「梅毒は全身の炎症を引き起こすことが知られており、この炎症が心血管疾患の進行を加速させる可能性がある。今回の研究で示されたのは、梅毒の場合、こうした心血管疾患の兆候は見過ごされがちだが、決して無視すべきではないということだ。特に、梅毒の治療後でもこれらの影響が残ることは、心血管疾患の一因となり得る」と指摘している。(HealthDay News 2026年4月17日) https://www.healthday.com/health-news/infectious-disease/this-sexually-transmitted-infection-linked-to-heart-attack-stroke Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock