もし、ピッツバーグの救急外来での生と死を描いた緊迫感にあふれるHBO Maxのドラマ、『ザ・ピット/ピッツバーグ救急医療室(原題:The Pitt)』がビデオゲームになったとしたら、どんなものになるだろうか。実は、ある意味ではそれは既に実現されており、そのゲームが救命のための救急医の迅速な判断力を高める一助となっていることが、新たな研究で示唆された。このタブレット型ゲーム「Night Shift」は、若手の救急医となったプレイヤーが外傷患者のトリアージを行うもので、限られた臨床情報をもとに、90秒以内に判断を迫られるパズル形式の課題も含まれる。このゲームをベースにしたトレーニングを受けた救急医は、重傷を負った高齢患者に必要な治療を正確に判断する能力が他の医師よりも優れていたという。米ピッツバーグ大学医療センターの外傷外科医Deepika Mohan氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に4月20日掲載された。救急外来で重傷患者をトリアージするには、瞬時の判断が求められる。研究グループによると、医師は患者とその外傷に関する情報を素早く評価し、適切な治療レベルを判断する。その判断は、退院させたうえでの自宅療養、手術室への移送、より高度な外傷対応が可能な病院へのヘリコプター搬送などが選択肢となる可能性がある。研究グループによると、高齢者が救急外来を受診した場合、70%が実際よりも軽症と判定されている(アンダートリアージ)。Mohan氏は、「重篤な外傷患者のうち、65歳以上の患者の割合は増加傾向にあるが、残念ながらこうした高齢患者が救急外来に来た場合、一見すると重症に見えにくいため、適切にトリアージされないことが多い。例えば、肋骨骨折はたいしたことではないと思われがちだ。しかし、高齢者が転倒して肋骨を4本骨折した場合の死亡リスクは、肝臓を撃たれた若年者と同程度である」とニュースリリースで述べている。Mohan氏は2016年、ピッツバーグに拠点を置く教育・エンターテインメント系ゲーム開発会社のSchell Games社とともに、「Night Shift」の初回バージョンを開発した。「Night Shift」は現在、アップル社のアプリとして利用可能である。このゲームは、実際の患者に影響を及ぼすことなく、救急医が無意識下で良い判断と悪い判断の両方から学ぶことを目的にしていると研究グループは説明している。このゲームの有効性を検証するため、Mohan氏らは今回、800人の救急医(臨床経験年数中央値10年、男性71%)を研究に登録し、半数を「Night Shift」ベースのトレーニングを受ける群(ゲーム介入群)、残る半数を全救急医が資格保持に必要とする通常の教育セッションを受ける群にランダムに割り付けた。ゲーム介入群は、初回は2時間、その後は3カ月ごとに20分間ゲームをプレイした。その結果、実際の救急医療の現場で重症の高齢外傷患者のアンダートリアージ率は、通常教育群の57%(527/919人)に対してゲーム介入群では49%(402/819人)と低かった。一方で、オーバートリアージ率については、両群で同程度だった。総合的に見ると、このゲームは医師に外傷患者を他院へ搬送する判断を促すだけでなく、判断力そのものを向上させた可能性が示唆される。Mohan氏は、物語性によって感情に訴えかけ、パズルによって意思決定を形作るというゲームの手法が、医師に染みついた行動様式を書き換え、判断力を向上させている可能性があるとの見解を示している。ただし、ゲーム介入群が最も良い判断を下したのはプレイ後30日以内であり、その後は再び「Night Shift」をプレイするまで効果が薄れる傾向が認められたとMohan氏は付け加えている。同氏は、「3カ月ごとに20分間のプレイというのは最適な『用量』ではないかもしれない。より高頻度に、より短時間プレイする方が良い可能性も考えられる。例えば、毎週90秒間の『マイクロドーズ(極めて低用量)』などの方が効果的かもしれない」と話している。(HealthDay News 2026年4月22日) https://www.healthday.com/health-news/first-aid-and-emergencies/video-game-training-sharpens-er-doctors-split-second-decisions Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.HBO Maxのドラマ「The Pitt」に出演するSupriya Ganesh、Jalen Thomas Brooks、Ambar Martinez Photo Credit: Warrick Page