世界的に広く実施されている膝の手術の一つである半月板部分切除術は、患者の症状改善に寄与しないばかりか、症状悪化につながる可能性がある——そんな研究結果を、ヘルシンキ大学(フィンランド)外科分野教授のTeppo Järvinen氏らが報告した。半月板損傷は、膝関節内にある半月板が損傷することで、痛みや腫れ、関節可動域の制限などを引き起こす疾患で、半月板部分切除術は、その損傷部分を切除する手術だ。Järvinen氏らの研究では、この手術は長期的には膝の痛みや機能を改善せず、むしろ関節炎の進行を促進する可能性が示された。詳細は、「The New England Journal of Medicine(NEJM)」に4月29日掲載された。Järvinen氏は、「今回の結果は、広く行われている治療法に効果がないばかりか、有害でさえあることが判明する“医療の逆転”の一例である可能性がある」とニュースリリースで述べている。この研究では、フィンランドで半月板損傷患者146人を対象に実施されたランダム化比較試験の10年間の追跡結果が解析された。患者の約半数(70人)には半月板部分切除術が実施され、残り半数(76人)にはシャム(偽)手術が行われていた。研究グループは、10年間にわたり、X線検査による変形性膝関節症の進行評価に加え、再手術の有無や追加の膝治療などを追跡した。また、3種類の患者報告アウトカム尺度を用いて、半月板損傷に伴う症状、膝機能、運動後の膝痛などについても繰り返し評価した。患者のうち、いずれの群も91%(半月板部分切除術群64人、シャム手術群69人)が10年間の追跡調査を完了した。解析の結果、半月板部分切除術は、患者の症状改善にほとんど役立たなかったことが示された。具体的には、半月板損傷に伴う症状や日常生活機能障害を評価するウエスタンオンタリオ半月板評価ツール(WOMET)スコアの両群間の平均差は−9.4点で、半月板部分切除術群の結果の方が不良であった。また、膝機能を評価するLysholmスコアも−5.1点と、半月板部分切除術群で機能低下傾向が認められた。さらに、運動後の膝痛スコアは0.86点高く、半月板部分切除術群の方が痛みが強い傾向が示された。加えて、X線画像で変形性膝関節症の進行が確認された割合は、半月板部分切除術群で81%、シャム手術群で70%であり、人工膝関節置換術または高位脛骨骨切り術を受けた患者の割合はそれぞれ12%、4%であり、いずれも半月板部分切除術群の方が高かった。共著者の1人であるPihlajalinna Kelloportti Hospital(フィンランド)のRaine Sihvonen氏は、「この手術は、膝の内側の痛みが内側の半月板損傷によって引き起こされており、そうした損傷部位を外科的に治療できるという前提に基づいている。このような生物学的妥当性に基づく推論は、いまだ医学界で広く見られる。しかし今回の場合、その前提は厳密な検証によって支持されなかった」とニュースリリースで述べている。論文の筆頭著者であるヘルシンキ大学整形外科・外傷学分野のRoope Kalske氏によれば、今回の結果は、半月板部分切除術の有効性が乏しいことを示した過去のランダム化比較試験の結果とも一致しているという。Järvinen氏は、「過去10年近くにわたり、多くの整形外科領域以外の独立した診療ガイドライン作成団体が、この手術の中止を推奨してきた。それにもかかわらず、米国整形外科学会(AAOS)や英国膝関節外科学会(BASK)などは、依然としてこの手術を推奨し続けている。これは、効果の乏しい治療法をやめることがいかに難しいかを如実に示している」と述べている。なお、米ハーバード大学医学大学院は、半月板損傷に対する非外科的治療として、理学療法、膝を休ませること、膝の冷却および挙上、膝装具(ブレース)の使用、市販の鎮痛薬の服用などを推奨している。(HealthDay News 2026年5月1日) https://www.healthday.com/health-news/bone-and-joint/common-knee-surgery-doesnt-help-might-actually-make-things-worse-clinical-trial-reports Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock