米国が麻疹(はしか)排除国としての地位喪失に急速に向かっていることが、新たな研究で示された。米国は2000年に麻疹排除の達成を宣言したが、同年に米疾病対策センター(CDC)が設定した麻疹排除状態の維持の7つの指標のうち4項目を満たせていない状況にあるという。この研究は米ボストン小児病院の小児科医で博士研究員のAnne Bischops氏らのグループによるもので、詳細は、「The Lancet」に5月2日掲載された。Bischops氏は、「米国が2026年中に麻疹排除国の地位を失う可能性は極めて高いと考えられる」と結論付けている。世界保健機関(WHO)によると、重症の麻疹感染は命に関わる肺炎や脳炎を引き起こす可能性がある。また、視力や聴力に長期的な障害が残ることもある。論文の上席著者であるボストン小児病院のMaimuna Majumder氏は、「麻疹は回復したとしても、生涯にわたる問題が残る可能性がある。特に1歳未満の乳児は重篤な合併症のリスクが極めて高い。この流行で感染した子どもが受ける真の影響は何年も経過してから初めて明るみに出るかもしれない」とニュースリリースで述べている。 本研究の背景情報によると、米国で最近相次いでいるアウトブレイクは2025年1月にテキサス州から始まり、その後45州に広がった。研究グループは今回、現在の米国の状況を、CDCの国家予防接種プログラムが定めた、麻疹排除状態が維持されているかを評価する7指標と照らし合わせた。その結果、7項目のうち4項目が既に排除維持の基準を満たしていないことが明らかになった。・麻疹罹患率が低い:患者数は人口1000万人当たり1例未満米国では2026年初頭の時点で人口1000万人当たり93.2例が報告されている・麻疹症例の大多数を国外から持ち込まれた症例が占めている2025年初頭以降、国外由来の症例は全体の6~7%に過ぎず、大半は国内感染例であった。・アウトブレイクの発生数が少なく(中央値が年間4件以内)規模が小さい(1回のアウトブレイクの症例数が中央値6例)米国では2025年には48件のアウトブレイクが発生し、2,000例超の感染例が報告された。今年もすでに19件のアウトブレイクが発生し、1,600例超の感染例が報告されている。・伝播レベルが低い:1人の感染者が平均して1人未満に感染させる2025年初頭以降の期間の75%以上でこの基準を超えていた。 また、残る3つについても悪化傾向が認められた。・感染源不明症例が4週連続で発生していない2025年1月の最初の感染例以降、米国では4週連続で症例報告がなかった期間は一度もなく、また全体の90%が国内感染例だった。・ワクチン接種による集団免疫集団免疫の達成には95%の人々が2回の麻疹ワクチン接種を受ける必要があるが、2024~2025年度の米国の幼稚園児の平均接種率は92.5%、6~59歳における麻疹抗体保有率(2017~2020年)は95.7%だった。・国内に定着して持続的に感染を広げている麻疹ウイルス株がない大多数の症例でウイルスの遺伝子型が同一であり、多くが同一配列を有していることから、同じ系統のウイルスが国内で伝播している可能性が示唆されている。 この研究結果は、今後開催予定の汎米保健機関(PAHO)の感染症専門家委員会にも影響を及ぼす可能性がある。同委員会は11月の会議で米国の麻疹排除国としての地位の再評価を予定している。なお、研究グループによると、カナダは2025年11月に麻疹排除国の地位を失っている。 「こうした流れを食い止めるには、ワクチン接種の取り組みを強化し、接種免除率を低下させ、現在も広がりつつある地域内感染を断ち切ることが不可欠だ」と研究グループは主張している。(HealthDay News 2026年5月5日) https://www.healthday.com/health-news/infectious-disease/us-on-the-brink-of-losing-measles-free-status-study-warns Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Konstantin Postumitenko/Adobe Stock