映画やテレビに登場する自閉スペクトラム症(ASD)の男性のステレオタイプな描写の影響で、女性やノンバイナリーの人の間でASDの診断が遅れがちになっている可能性が、新たな研究で示唆された。ドラマ『ビッグバン★セオリー ギークなボクらの恋愛法則』(原題:The Big Bang Theory)のシェルドン・クーパーや、映画『レインマン』(原題: Rain Man)のレイモンド・バビットといった登場人物は、ひと目でASDだと分かるように描かれている。しかし、こうした描写は過度に誇張され単純化されているため、ASDの人には共感しにくいものになっていることが判明したという。英スターリング大学のSarah Dantas氏らによるこの研究の詳細は、「Societies」に4月29日掲載された。Dantas氏は、「この研究は、表象がいかに大きな力を持ち得るかを示している。ASDが偏ったイメージで描かれると、社会の理解だけでなく、当事者の自己理解までもが妨げられる可能性がある。研究参加者は、ステレオタイプな描写が自分自身や自分の子どもを含む他者の診断の遅れにつながったと語っていた」とニュースリリースで説明している。今回の研究でDantas氏らは、ASDのある4人(女性2人、ノンバイナリーの女性1人、ノンバイナリーの人1人)を対象に、対面式のフォーカスグループ・セッションを実施した。このうち3人は臨床的にASDと診断されており、残る1人は自身をASDと認識していた。参加者は、セッションの中で「ジン(Zine)」と呼ばれる自主制作の小冊子を共同で作成した。この小冊子には、メディアでの描写が自分たちの経験やASDの理解にどのような影響を与えたかを表現した絵やコラージュ、詩などが掲載された。参加者は、メディアで描かれるASDの人が、概して多面性や自律性、感情の深みなどの人間性を欠いた、限られた特徴や問題点のみで表象されていることを指摘した。参加者の1人であるAndreaさんは、「一般的な登場人物は、立場も性格も居場所もさまざまで、多様に描かれている。一方で、ASDなど何らかの障害を持つ登場人物の場合、皆がこの『小さな箱』の中に押し込められてしまう。ニューロダイバージェントの人(脳や神経の機能の仕方が定型とは異なる人)は、単に“ニューロダイバージェント”として存在しているわけではなく、それを超えた多面性を有する人間なのです」。別の参加者であるIslaさんは、「私が読んだことや学んだことのせいで(中略)私は自分がASDであり、娘もASDであることに気が付きませんでした。もし事実に基づく正しい知識があり、異なる見方ができていれば、状況は違っていたかもしれません」と話し、メディアのステレオタイプな描写が自分と娘のASD診断の遅れにつながったとした。研究参加者によると、リアリティ番組でさえASDが極端に固定化されたイメージで示されているという。Netflixのリアリティ番組『ラブ・オン・スペクトラム~自閉症だけど恋したい!』(原題:Love on the Spectrum)について、Andreaさんは次のように指摘している。「この番組では、いつも出演者の母親や父親など保護者のような立場の人が登場します。他の恋愛リアリティ番組で、出演者の母親があれほど頻繁に出てくることがあるでしょうか?」。Dantas氏は、従来のASDの定義が、主にASDではない専門家によって、しばしば医学的、あるいは「欠陥」に焦点を当てた視点から形作られてきたと指摘する。同氏は、「必ずしもASDの人が語る実体験が、同等に正当で重要なものとして扱われてこなかったということだ。ASDの人の意見を取り入れずに形作られた表現は、人間味を欠き、現実の生活からかけ離れたものになりかねない。一方で、ASDの人が自分の経験を定義し共有できれば、その表現はより多面的で正確かつ意味のあるものになる」と述べている。参加者は、ASDについて最も有益で、人生を変えるほど重要な気付きを与えてくれたのは他のASDの人だったと繰り返し強調した。Dantas氏は、「このことは、研究だけでなくメディアや公の議論においても実体験を重視することの重要性を改めて示している」と指摘している。(HealthDay News 2026年5月8日) https://www.healthday.com/health-news/neurology/tv-movies-offer-flawed-depictions-of-autism-add-to-delayed-diagnosis-study-says Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock