猛暑は喘息増悪の引き金となる可能性があり、特に夜間の熱波は喘息増悪リスクの上昇と関連することが、新たな研究で示唆された。米ボルティモアの病院データを解析したところ、熱波の発生後には喘息関連で救急外来(ED)を受診する患者が増加することが明らかになったという。米ジョンズ・ホプキンス大学地球惑星科学教授のBenjamin Zaitchik氏らによるこの研究の詳細は、「GeoHealth」に5月6日掲載された。研究では、猛暑が夜間まで続いた場合に喘息増悪リスクが特に高まることが明らかになったという。Zaitchik氏は、「夜間に屋外が暑いと、エアコンのないタウンハウス(長屋)の2階の寝室は息が詰まるほど蒸し暑くなる。これは生死に関わる問題だといえる。なぜなら、人によっては致死性の喘息増悪を経験する可能性があるだけでなく、生活の質(QOL)や幸福感、子どもが子ども時代を楽しむ力にも影響を及ぼすからだ」とニュースリリースの中で述べている。研究グループは今回、2016~2022年の夏季にボルティモアで発生した成人819件、小児695件の喘息増悪によるED受診を対象に、患者の居住地ごとに、土地利用や都市構造を基に推定した高解像度の日中・夜間気温データを割り当てた。熱波の定義は研究により異なるため、本解析では、11種類の既存の熱波指標を用いた。これらの指標における熱波の判定には、ボルティモア空港で取得された1991~2020年の30年間の気温データの統計分布が基準として用いられた。その上で、これらのデータを基に、暑さと喘息増悪との関連を解析した。その結果、地域レベルの気温データを用いた解析では、夜間の最低気温がその地域として異常に高い場合に、喘息関連のED受診との強い関連が認められた。小児患者の場合、夜間の熱波後に喘息増悪のリスクが28~38%上昇し、成人患者でも26~40%の上昇が見られた。また、小児患者では地域差が見られ、特に社会的に脆弱な地域ではリスク上昇が顕著だった。一方、空港の気象観測データを用いた熱波指標では、夜間よりも昼間の極端な暑さとの関連が示されたが、ボルティモア市の猛暑警報(コードレッド)に用いられている指標では有意な関連は認められなかった。研究グループによると、連夜にわたって暑さに長時間さらされ続けると、喘息症状が増悪する可能性があるという。論文の上席著者であるジョンズ・ホプキンス大学医学部の喘息プレシジョンメディシンセンター長のMeredith McCormack氏は、「喘息の増悪や喘息発作は、咳や胸の圧迫感、息切れなどの症状の増加から始まることがある。EDを受診する前に、吸入薬の使用回数を増やすなどの方法を試す患者もいるだろう。そのため、ED受診を要するほど症状が悪化するまで、数日間のタイムラグが生じる可能性がある」とニュースリリースの中で述べている。また、McCormack氏によると、夜間の暑さは身体が休息し回復する機会を奪うため、喘息患者に大きな負担を与えるという。さらに、身体の防御機能の一部は夜間に低下する。例えば、気管支拡張作用を持つアドレナリンの血中濃度は周期的に午前3時前後に自然に低下するため、この時間帯には喘息症状を抑える働きが弱まる。研究グループは、今回の研究の結果を踏まえ、日中の気温予測に基づいた猛暑警報システムでは、本来の効果が発揮されていない可能性があるとの見方を示している。また、現在は、地域の気象局観測所で測定された単一の気温データが市全体の代表値として用いられているが、都市部では地域ごとに気温を測定する方が住民の助けになる可能性があるとも指摘している。論文の筆頭著者であるBianca Corpuz氏は、「暑さへの曝露量は地域によって大きく異なり、その違いは健康にも影響する。地域単位で気温を測定すると、広域の気象データでは捉えきれない傾向が見えてくる。各都市が脆弱な地域社会をしっかりと守るためには、こうした地域レベルの情報が極めて重要になる」と述べている。(HealthDay News 2026年5月11日) https://www.healthday.com/health-news/asthma/nighttime-heat-waves-increase-asthma-risk Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock