新たな研究により、GLP-1受容体作動薬が一部の肥満関連がんの転移進行リスクを抑制する可能性が示された。GLP-1受容体作動薬はもともと糖尿病治療薬として開発されたが、現在は肥満症や心血管疾患の治療にも広く用いられている。米Taussig Cancer InstituteのMark David Orland氏らによるこの研究結果は、米国臨床腫瘍学会(ASCO 2026、5月29~6月2日、米シカゴ)で発表された。米フォックス・チェイスがんセンターで支持療法腫瘍学・緩和ケアプログラム責任者を務めるMarcin Chwistek氏は、「GLP-1受容体作動薬は、これまでも単なる血糖降下薬ではなかった。その抗炎症作用および免疫調節作用から、以前より幅広い作用を持つことが示唆されている」と述べている。今回の研究でOrland氏らは、TriNetXの国際的なリアルワールドデータネットワークを用いて、ステージ1~3のがんの診断を受け、診断後にGLP-1受容体作動薬による治療を開始した1万225人の健康データを解析した。対象としたがんは、乳がん、前立腺がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、大腸がん、肝細胞がん、腎細胞がん、膵臓がんの7種類とした。これらの患者と社会人口統計学的特徴やBMI、血糖関連因子などを一致させた、診断後にDPP-4阻害薬による治療を開始した患者を対照とし、ステージ4(転移がん)への進行リスクを比較した。その結果、GLP-1受容体作動薬群では7種類中6種類のがんで転移がんへの進行リスクの低下が認められ、うち4種類(NSCLC、乳がん、大腸がん、肝細胞がん)での低下は統計学的に有意であった。進行リスクは、NSCLCで50%、乳がんで43%、大腸がんで31%、肝細胞がんで38%の低下であった。GLP-1受容体作動薬群において、新たな安全性シグナルや有害事象の増加は認められなかった。さらに、The Cancer Genome Atlas(TCGA)の遺伝子データを解析して、GLP-1受容体の発現と全生存期間との関連を検討した。その結果、腫瘍でのGLP-1受容体の発現が高い患者では、死亡リスクが33%低いことが示された。がん種ごとに検討すると、特に乳がんでのリスク低下は45%と顕著であった。Orland氏らは、これらの結果は、GLP-1受容体作動薬の抗炎症作用および免疫調節作用により説明される可能性があるとしている。また、本研究は観察研究であり、因果関係を証明するものではないとして慎重な解釈を求める一方で、「将来、臨床試験を実施する上で十分な根拠となる有望な結果だ」との見方も示している。なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。(HealthDay News 2026年5月27日) https://www.healthday.com/health-news/cancer/glp-1-meds-may-help-slow-the-spread-of-certain-obesity-related-cancers Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock