緩和ケアを受けている進行がん患者の症状への対処や健康関連QOLの維持に、スマートフォンのアプリによる症状モニタリングが役立つ可能性があることが、新たな研究で示された。香港大学(中国)臨床腫瘍学准教授のWendy Wing-lok Chan氏らによるこの研究結果は、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO 2026、5月29日~6月2日、米シカゴ)で発表されるとともに、「JAMA Network Open」に6月1日掲載された。今回の研究では、さらなる全身性抗がん治療を受けないことを決めた進行固形がん患者1,214人(年齢中央値78歳、男性50.8%)を対象に、症状モニタリングアプリを活用した緩和ケアの有効性をランダム化比較試験で検討した。対象患者は、アプリによる症状モニタリングと通常ケアを受ける群(アプリ介入群、590人)と通常ケアのみを受ける群(通常ケア群、624人)にランダムに割り付けられた。このアプリでは、患者が毎週、身体的および精神的な症状についての簡単な質問票に回答する。症状への対処法が自動的に提示され、重度の症状が報告された際には、看護師によるフォローアップが行われる仕組みとなっている。その結果、主要評価項目である健康関連QOLについては、18週時点でアプリ介入群の方が通常ケア群より良好に維持されていた。健康関連QOLの評価指標であるEQ-5D-5L効用値は、アプリ介入群ではほぼ維持されていた一方(ベースライン時:0.49→18週時点:0.52)、通常ケア群では低下していた(0.50→0.38)。また、患者が自身の健康状態を0~100で評価するEQ-5D視覚的アナログ尺度(VAS)スコアも、アプリ介入群では上昇していたのに対し(63.16→65.72)、通常ケア群では低下しており(63.87→59.69)、いずれの指標においても、群間差は統計学的に有意であった。副次評価項目である自己効力感についても、アプリ介入群では維持された一方、通常ケア群では低下しており、群間差は有意であった。一方、ECOG PS(米国東海岸がん臨床試験グループのパフォーマンスステータス)による評価で全身状態の悪化が認められたのは、アプリ介入群で12.0%、通常ケア群で17.4%、救急外来受診率はそれぞれ20.2%、25.6%で、いずれもアプリ介入群の方が少なかったが、統計学的な有意差は認められなかった。入院については、予定外の入院発生率(アプリ介入群17.2%対通常ケア群28.5%)と入院日数(3.4日対7.3日)のいずれもアプリ介入群の方が有意に少なかった。論文の筆頭著者であるChan氏は、「このランダム化比較試験により、デジタルプラットフォームを用いた症状の積極的なモニタリングと、看護師による迅速なフォローアップを組み合わせることで、健康関連QOLの維持や予定外入院の減少につながることが示された」と述べている。この研究には関与していない米ウィスコンシン大学の胸部腫瘍内科医であり、緩和ケア部門責任者を務めるToby Christopher Campbell氏は、「がん患者は痛み、倦怠感、睡眠障害などの症状にしばしば苦しんでいるが、その多くを打ち明けることなく抱え込んでいる。患者が症状を報告でき、支援を受けられるようになると、気分が改善し、より良い転帰につながる可能性がある」と述べた。さらにCampbell氏はニュースリリースで、「本試験は、質の高い症状報告と適切な介入によって、患者の症状や健康関連QOLを改善できることを示すエビデンスをさらに強化するものだ。ただし、試験では症状モニタリングにモバイルアプリを用いているため、患者にはアプリを操作し、提示された指示を実行できるだけのデジタルリテラシーが求められる」と指摘している。(HealthDay News 2026年6月2日) https://www.healthday.com/health-news/cancer/smartphone-app-helps-those-with-advanced-cancer-maintain-quality-of-life Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Seventyfour/Adobe Stock