脊髄への電気刺激により、脳卒中患者の上肢(腕や手)の機能が改善する可能性があるようだ。重度の運動障害を有する脳卒中患者7人を対象としたパイロット試験で、4週間にわたる脊髄刺激療法(spinal cord stimulation;SCS)により、上肢の筋力が平均32%向上し、痙縮も軽減したことが示された。痙縮とは、脳卒中や脊髄損傷後の後遺症であり、自分の意思とは無関係に筋肉が収縮して関節が固くなる運動障害である。米ピッツバーグ大学脊髄刺激研究室長のMarco Capogrosso氏らによるこの研究結果は、「Nature Medicine」6月4日号に掲載された。脳卒中は、米国成人における上肢の麻痺の主な原因であり、毎年、約40万人が腕や手の持続的な筋力低下に悩まされている。多くの患者は上肢の機能回復を切実に求めているが、標準的なリハビリテーションで有意な改善が得られることはまれである。この研究では、7人の慢性期脳卒中患者を対象に、頸部硬膜外SCSの実現可能性、有効性、安全性を検討した。頸部硬膜外SCSは、頸髄を覆う硬膜の外側にある空間(硬膜外腔)に電極を埋め込み、神経回路に電気刺激を与えることで神経活動を調節する治療法である。対象患者はいずれも、上肢のFugl-Meyer Assessment(FMA)スコア(最大66点)が15〜35点で、重度の運動障害を有していた。Capogrosso氏らは、頸髄の片側の硬膜外腔に2本の電極を留置し、4週間にわたりSCSを実施した。その結果、電気刺激中は、障害の重症度にかかわりなく筋力が平均32%向上し、FMAスコアには平均5.6点の改善が認められた。重篤な有害事象は発生しなかった。また、皮質脊髄路が残存していた3人では、手や指の運動機能の改善も認められた。さらに、試験期間中に実施された運動訓練は平均8.6時間で、そのうちSCSを併用したのは5.5時間だった。それにもかかわらず、試験終了時のFMAスコアは試験開始時から平均6.6点改善し、全ての患者で痙縮の改善も認められた。ただし、持続的な改善効果は刺激の継続に依存しており、刺激中止の4週間後には試験終了時(4週時)と比べて改善効果が減弱していた。Capogrosso氏は、「頸部硬膜外SCSは、主に補助的な治療技術として機能し、刺激中には運動機能の改善が得られる。脊髄を刺激することで、脳と脊髄の間に残存している神経回路を即時に、より効率的に働かせることができ、その結果として運動機能の改善が可能になる」と述べている。研究チームは現在、長期間のSCSの効果を評価するため、規模を拡大した臨床試験の参加者を募集している。Capogrosso氏は、「本研究結果は、初期の実現可能性評価が完了したことを示すとともに、実臨床への応用に向けた重要な一歩となるものだ。われわれは、最終的には診療施設内だけでなく日常生活の中でも利用できる技術の開発を目指している。今回の結果により、SCSが脳卒中患者が最も必要とする場面で上肢を使えるよう支援する実用的な埋め込み型治療法となり得るという確信が得られた」と語っている。(HealthDay News 6月5日) https://www.healthday.com/health-news/neurology/spinal-cord-stimulation-may-restore-arm-strength-after-stroke Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock