大気汚染への長期曝露は、たとえ曝露レベルが中等度であっても冠動脈疾患(CAD)の進行と関連することが、新たな研究で示された。大気汚染物質であるPM2.5および二酸化窒素(NO2)への曝露レベルが高い人ほど、心臓のCT画像で評価した冠動脈石灰化スコア(CACS)とプラーク負荷が高かったという。トロント大学(カナダ)医療画像学分野のKate Hanneman氏らによるこの研究結果は、「Radiology」に6月9日掲載された。Hanneman氏によると、本研究の対象者における大気汚染物質への10年間の曝露量中央値は、カナダの現行の空気質基準を大きく下回っていたという。同氏は、「現行の空気質基準値を下回る曝露レベルであっても、大気汚染物質への長期曝露はCADの進行と独立して関連していた。このことは、現行の規制では必ずしもCADの発症や進行を十分に防げない可能性を示している。大気汚染は、血圧、コレステロール値、喫煙と並ぶ、修正可能な心血管リスク因子として位置付けられるべきだ」と述べている。研究グループによると、過去の研究では、大気汚染物質が心血管疾患の主要な環境リスク因子であることが示されている。今回の研究では、2012年から2023年の間にトロントの3つの主要な病院で心臓CT検査を受けた成人1万1,128人(平均年齢59.1歳、男性51.7%)のCT画像を用いて、大気汚染物質への長期曝露とCAD進行との関連を性別ごとに評価した。対象者のうち7,313人が冠動脈造影検査を受けていた。CAD進行は、CT画像からCACS、プラーク総負荷、および70%以上の狭窄(閉塞性CAD)の有無により評価した。大気汚染曝露は、過去10年間の居住地ベースでのPM2.5およびNO2の平均曝露量として推定した。10年間の大気汚染物質曝露の中央値は、PM2.5が7.5μg/m3、NO2が13.4ppbだった。解析の結果、PM2.5曝露量が1μg/m³増加するごとにCACSが10.7%上昇し、プラーク総負荷のカテゴリーが1段階上がるオッズが12.5%増加し、閉塞性CADのオッズが22.6%増加することが示された。また、NO2が1ppb増加するごとに、CACSが1.5%上昇し、プラーク総負荷のカテゴリーが1段階上がるオッズは2.2%、閉塞性CADのオッズは3.6%増加した。性別ごとに解析すると、大気汚染物質への長期曝露は、女性では閉塞性CADリスクの有意な上昇と関連していた(PM2.5:オッズ比1.81、P=0.048、NO2:オッズ比1.06、P=0.04)。一方、男性では、大気汚染物質への長期曝露とCAD進行との間に有意な関連は認められなかった。Hanneman氏は、「本研究は、高所得国に典型的な中程度の大気汚染曝露レベルの集団を対象に、心臓CTを用いて大気汚染物質への曝露とCAD進行との関連を示した最大規模の研究の一つである。評価にはCACSだけでなく、プラーク総負荷や閉塞性CADも含まれていた」と述べている。Hanneman氏は、「冠動脈アテローム性動脈硬化において、このような低い曝露レベルでも測定可能なシグナルが検出されるという事実は、大気汚染物質による心血管系への有害な影響に明確な安全閾値が存在しない可能性を示唆している。また、比較的空気がきれいとされる国々の住民であっても、環境曝露による心血管リスクは無視できない水準にある可能性がある」と述べている。(HealthDay News 2026年6月9日) https://www.healthday.com/health-news/cardiovascular-diseases/air-pollution-might-contribute-to-clogged-arteries-heart-disease-risk Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock