脳卒中患者の上肢(腕、手)の機能回復に、1990年代スタイルのレトロなゲームが役立つ可能性があるようだ。スクリーン上のヘリコプターを操縦して動くターゲットを攻撃するなどのタスクを行うビデオゲームを通して脳卒中患者の筋肉を再訓練することで、脳卒中後に見られる筋の同時収縮パターンが減少し、上肢機能が改善する可能性が示された。米ノースウェスタン大学神経学・神経科学教授のMarc Slutzky氏らによるこの研究の詳細は、「Neurorehabilitation and Neural Repair」に6月8日掲載された。脳卒中により脳がダメージを受けると、脳からの運動シグナルが乱れて筋肉の協調性が低下し、異常な同時収縮が起きるようになる。そのため、上腕二頭筋が誤ったタイミングで収縮してしまい、肘をまっすぐ伸ばした状態で腕を前方へ伸ばすことが難しくなるという。今回報告されたビデオゲームは、この異常な同時収縮を減らすことを目的に開発された、神経リハビリテーション用筋電インターフェース(myoelectric interface for neurorehabilitation;MINT)を用いたシステムである。MINTシステムでは、機能障害がある側の腕に装着した小型デバイスが、筋肉を動かす際の電気的活動を筋電図(EMG)として測定する。プレイヤー(脳卒中患者)が動かすカーソルは、このデバイスにより測定されたEMGを基に制御される。例えば、上腕二頭筋はカーソルを右に、三角筋はカーソルを上に動かす。一方、これらの筋肉が同時に収縮すると、カーソルは斜めに動く。この仕組みにより、異常な同時収縮が見られる筋群について、それぞれの筋肉を個別に活動させる訓練が行われる。今回の研究では、脳卒中患者を、MINTシステムで2筋または3筋を個別にコントロールする訓練を行うMINT群と、1種類の筋肉のみを使用する対照群にランダムに割り付け、MINTシステムの実行可能性と有効性を検討した。MINT群は、1日90分、週6日間の訓練を、2〜3週間おきに訓練する筋肉を切り替えながら行った。その結果、3筋をコントロールする訓練を行ったMINT群でのみ、脳卒中後の上肢機能の評価尺度であるWMFT(ウルフ・モーター・ファンクション・テスト)が6週間で約6.8秒有意に改善した。そのほかの群では、有意な改善は認められなかった。MINT群全体では4.1秒の改善が認められた。さらに、プロトコル通りに介入を受けた参加者を対象に解析すると、3筋制御群では対照群と比較して、WMFTが7.5秒有意に改善していた。また、筋の同時収縮の低下と上肢の運動機能の改善との間に有意な関連が認められた。Slutzky氏は、「われわれは今回、従来とは異なるアプローチで研究を実施した。脳卒中患者の上肢の障害に対する直接的な治療を行い、特定の動作ができるようになるかどうかだけでなく、上肢機能そのものがどの程度改善するのかを測定した。その結果、われわれの訓練が実際に患者に改善をもたらしたことが分かった」と言う。しかも、参加者たちはゲームを楽しんでいたという。ある参加者はアンケートで、「体験全体が楽しく、有益だった」と回答していた。また、「間違いなくこのゲームから身体的にも精神的にも良い影響を受けた」と回答した参加者もいた。研究グループは現在、このゲームに用いるウェアラブルデバイスのワイヤレス化を進めるとともに、ゲームをより魅力的にするための改良に取り組んでいる。また、このアプローチを脳卒中患者の下肢の機能回復にも応用できるかどうかを検証する計画もあるという。(HealthDay News 2026年6月10日) https://www.healthday.com/health-news/stroke/retro-video-game-aids-stroke-recovery-improves-arm-function Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.写真:MINTシステムを用いたビデオゲームをプレーする研究参加者の脳卒中患者Photo Credit: Kristin Samuelson, Northwestern University