高齢患者では、手術後に混乱や見当識障害などを特徴とするせん妄が生じることが少なくないが、術後せん妄のスクリーニング実施率には病院ごとに差があることが、新たな研究で明らかにされた。米国外科学会(ACS)が開発したGeriatric Surgery Verification(GSV)プログラムの認証を取得した病院(GSV認証病院)では、ほぼ全ての術後患者にせん妄スクリーニングが実施されていたのに対し、非認証病院での実施率は50%程度にとどまったという。GSVプログラムは、せん妄、転倒、肺炎などの一般的な術後合併症の予防に重点を置いた医療品質向上プログラムである。米ロヨラ大学医療センターのSarah Remer氏らによるこの研究結果は、「Journal of the American College of Surgeons」に6月10日掲載された。Remer氏は、「せん妄の多くは、特に高齢者では低活動型だ。これは患者が周囲との関わりを避けるようになったり無気力になったりする静かなタイプのせん妄だ。定期的なスクリーニングを行わなければ、こうした症例は単なる疲労と誤解され、見逃される可能性がある。しかし一部の病院では、患者に臨床的に明らかな過活動型せん妄が認められた場合にのみスクリーニングを行っている可能性がある。つまり、早期発見のためではなく、臨床的にせん妄が疑われた際の確認目的で使用しているのだ」とニュースリリースで述べている。本研究の背景情報によると、高齢患者の約25%が術後せん妄を発症する。今回の研究では、2024年に入院手術を受けた75歳以上の患者9万7,886人(平均年齢81.7歳)のデータを解析して、術後せん妄のスクリーニング実施率およびスクリーニング陽性率をGSVプログラム認証の有無別に比較した。その結果、術後せん妄スクリーニングの実施率は、GSV認証病院で94.3%であったのに対し、非認証病院では52.5%にとどまっていた。一方、せん妄スクリーニング陽性率は、GSV認証病院で11.3%、非認証病院で12.5%であり、両群間に統計学的な有意差は認められなかった。さらに、せん妄スクリーニングを受けた患者のうち、GSV認証病院の患者では、非認証病院の患者と比べて、入院期間が短く、在院日数が上位25%に該当する長期入院(以下、長期入院)の割合も低かった。一方、せん妄スクリーニングで陽性判定を受けた患者を対象にした解析では、入院期間、長期入院の割合、30日以内の再入院率について、両群間に有意差は認められなかった。Remer氏は、「せん妄は、長期入院、患者転帰の悪化、医療費の増加と関連している。今回の結果は、GSVプログラムの大きな利点の一つが、予防、早期発見、早期回復を支える標準化された多職種連携のケア体制にあることを示唆している」と述べている。さらに同氏は、「せん妄の定期的なスクリーニングは、早期発見や介入につなげられるだけでなく、誘因となった要因を評価する機会も得られるため重要だ」と付言している。Remer氏によると、家族も術後せん妄の発見に重要な役割を果たせるという。同氏は、「家族や介護者は、患者の思考や行動の微妙な変化に最初に気付くことが少なくない。術後に家族が混乱している様子を見るのはつらいことだが、患者が見当識を保ち、覚醒状態を維持できるよう支援し、急な変化を医療スタッフに知らせる上で家族は重要な役割を担っている。家族は患者を最もよく知っている存在であり、その観察は非常に貴重だ」と説明している。術後せん妄の予防を支援する対策として、Remer氏は以下のことを推奨している。・補聴器や眼鏡を患者ができるだけ早く使用できるようにする。・時計やカレンダーを見やすい場所に置き、患者の見当識の維持を助ける。・病室の照明を、昼は明るく、夜は暗くするなど、自然な睡眠・覚醒リズムに合わせる。・患者が覚醒し活動的でいられるよう、家族や知人、馴染みの場所、最近の出来事などについて会話を行う。(HealthDay News 2026年6月17日) https://www.healthday.com/health-news/senior-health/post-op-delirium-common-in-seniors-but-not-all-hospitals-screen-for-it Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock