近年、若い世代でのがん発症リスクが増加していることが示されているが、それを説明し得る要因が新たな研究によって浮かび上がった。この研究を実施した米セントルイス・ワシントン大学医学部准教授のYin Cao氏らによると、若い世代に見られる生物学的老化の加速が、がんに対処する体の仕組みに影響を及ぼしている可能性があるという。詳細は、「Nature Medicine」に6月22日掲載された。研究グループの説明によると、50歳未満または55歳未満で診断される若年発症がんは、1990年から2019年にかけて世界全体で24%増加し、現在も増加し続けている。また、米国、英国、カナダ、オーストラリアでは、1990年代生まれの人は1960年代生まれの人と比べて若年発症大腸がんリスクが少なくとも4倍高いという。研究グループによると、なぜ若い世代でがんリスクが高まっているのかについては明らかになっていない。一般的に、がんは加齢に伴う疾患と見なされている。高齢者でがんリスクが高いのは、がんの発生につながる細胞損傷が長年にわたって蓄積しているためと考えられている。このことから研究グループは、生物学的老化の加速が若い世代のがんリスクの上昇に関与しているのではないかと考えた。生物学的老化とは、出生からの経過年数を表す暦年齢とは異なり、日々の生活の中で生じる身体の摩耗や損傷の蓄積を反映した生物学的年齢に基づく老化を指す。今回の研究では、英国の大規模なヘルスリサーチ・プロジェクトであるUKバイオバンクの参加者である15万4,169人(女性55%、白人92%)の若年成人と、米国の同様の研究プロジェクト(All of Us Research Program)参加者1万262人(女性69%、非ヒスパニック系白人54%)のデータを解析した。参加者ごとに、血液検査の測定値に基づく全身の生物学的年齢(PhenoAge、Klemera–Doubal Method〔KDM〕年齢)と、メタボロミクス解析に基づく生物学的年齢を推定し、出生コホート(世代)による違いと若年発症がんとの関連を検討した。さらに、生体内に存在する全てのタンパク質(プロテオーム)を解析するプロテオミクス解析により臓器ごとの生物学的年齢を推定し、臓器別老化と若年発症がんリスクとの関連を検討した。その結果、若い世代ほど生物学的老化が加速している可能性が示され、生物学的年齢が暦年齢より高いほど、がんリスクも高まることが示された。例えば英国では、暦年齢で調整後の解析でも、1950~1954年生まれの人と比べて1965~1975年生まれの人では、標準化したPhenoAgeに基づく年齢差(生物学的年齢−暦年齢)が23%大きかった。この生物学的老化の加速は、若年発症固形がんリスクの8%の上昇と関連していた。さらに、参加者を生物学的老化の加速の程度に基づき分類すると、生物学的老化が最も加速していた群では、加速の程度が最も低かった群と比較して、若年発症固形がんリスクが15%高かった。米国でも同様に、1965~1969年生まれの人と比べて1990~1999年生まれの人では標準化したPhenoAgeに基づく年齢差が平均で92%大きかった。さらに、生物学的老化の加速は、若年者における特定の臓器のがんのリスク上昇にも関連していた。例えば、免疫系の老化が進んでいることは若年発症肺がんのリスク上昇に関連していた一方、脂肪組織の老化が進んでいることは若年発症大腸がんのリスク上昇に関連していた。研究グループによると、生物学的老化が加速する原因はまだ明らかになっていないが、環境要因、生活習慣、社会的要因などが若い世代の体に長期的な影響を及ぼし、老化を加速させている可能性は考えられるという。Cao氏は、「われわれの最終的な目標は、現代の環境がどのように生物学的な変化として体内に組み込まれ、がんリスクを高めるのかを解明し、がん予防を幅広い対象者への推奨から個別化された介入へと転換させることだ。これによって、より早期段階でリスクを特定し、個々人の生物学的特性に合わせた予防戦略を開発することに一歩近付くことができる」と話している。(HealthDay News 2026年6月24日) https://www.healthday.com/health-news/cancer/accelerated-aging-may-explain-rising-cancer-risk-in-young-adults Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock