スタチンによる重篤な筋障害への懸念は過大視されている可能性があるようだ。英オックスフォード大学の研究グループが開発した新たなリスク予測モデルでスタチン治療の適応となる成人の重篤な筋障害リスクを推定したところ、98%超が低リスクであることが示された。この研究結果は、「The Lancet Digital Health」に6月25日掲載された。筆頭著者である同大学のTing Cai氏はニュースリリースで、「重篤な筋障害は、スタチンに関して最も広く懸念されている副作用の一つである。しかし今回の結果から、スタチン治療の効果を期待できる大多数の人では、そのリスクは極めて低いことが示唆された」と述べている。スタチン使用に伴う副作用として最も多いのは筋肉痛であり、インターネット上では「スタチンは活動的な中高年や高齢者の活動を妨げるのではないか」といった懸念が広がっている。そこで研究グループは、こうした懸念に根拠があるのかを検証するため、1998年1月1日から2018年12月31日の間にイングランドで収集された178万5,207人分の電子健康記録(EHR)を用いて、スタチン使用に伴う入院または死亡に関連する重篤な筋障害の1年・5年・10年間の発症リスクを予測するモデルを開発した。このモデルでは、年齢、性別、筋障害の既往、ビタミンD欠乏、併用薬など、日常診療で記録される22項目の情報を用いてリスクを評価する。さらに別の388万9,504人の検証コホートでこのモデルの予測精度を確認した。その結果、検証コホートの99.6%で10年間の重篤な筋障害の発症リスクは10%未満と予測され、スタチン使用に伴う重篤な筋障害の発生は極めてまれであることが示された。また、臨床的にスタチン治療の適応が確認された患者でも98.1%は10年間の重篤な筋障害リスクが10%未満であり、大半が低リスクと推定された。Cai氏は、「個々の患者のリスクを把握することは、スタチンにまつわる懸念を適切にとらえることにつながり、十分な情報に基づく治療方針の決定を支え、患者に安心感を与えることができる。リスクが比較的高い少数の患者においては、経過観察や検査、あるいは代替治療について医師と相談するための、より明確な判断材料になる」と述べている。本研究では重篤な筋障害に焦点を当てているが、研究グループは、筋肉痛や筋肉の違和感といった軽度の症状の多くは、通常、スタチンが原因ではないことにも言及している。また、スタチン治療の適応がある患者の62.5%が、心血管疾患リスクが高いにもかかわらず、実際にはスタチンを処方されていないことも明らかになった。論文の上席著者であるニコシア大学(キプロス)医学部医療統計学分野のConstantinos Koshiaris氏はニュースリリースで、「治療方針は治療効果の予測に基づいて決定されることが多いが、潜在的な有害事象を理解することも同様に重要である。このモデルは、個々の患者のリスクを定量的に評価できるため、治療選択肢に関するバランスの取れた話し合いを支援するものとなる」と述べている。(HealthDay News 2026年6月26日) https://www.healthday.com/health-news/cardiovascular-diseases/statins-rarely-cause-severe-muscle-problems-researchers-say Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock