メラトニンは、概日リズムを調節し、自然な入眠を促すホルモンで、米国では睡眠補助サプリメントとしても販売されているが、筋肉や関節の慢性的な疼痛にも有効かもしれない。新たな研究で、慢性的な筋骨格系(MSK)疼痛に対するメラトニンの鎮痛効果は、オピオイドやアスピリン、ナプロキセン、アセトアミノフェンなどの鎮痛薬と同程度である可能性が示唆された。シドニー大学(オーストラリア)のKangchao Wu氏らによるこの研究の詳細は、「Pain」に6月30日掲載された。Wu氏は、「メラトニンを常備している家庭は少なくない上に、安価で安全性も確認されている。注目すべき点は、メラトニンが慢性疼痛の管理にも役立ち、よりリスクの高い薬剤への依存を減らす可能性を秘めている点である」と述べている。今回の研究では、世界各国で実施された、慢性的なMSK疼痛または術後MSK疼痛を有する患者2,028人を対象とした23件のランダム化比較試験(RCT)のデータを基に、メラトニンの鎮痛効果を鎮痛薬またはプラセボとの比較で検討した。23件の研究のうち14件は主に関節置換術や脊椎手術などの手術後の疼痛に関するRCTで、残る9件は線維筋痛症や変形性膝関節症、腰痛などの慢性疼痛に関するRCTだった。解析の結果、慢性的なMSK疼痛においては、メラトニンはプラセボと比較して、疼痛スケール(0〜100点)の平均差が−6.76点(95%信頼区間−15.89~2.36)であったが、統計学的に有意な疼痛軽減効果は認められなかった。一方、従来の鎮痛薬との比較では、有意に高い疼痛軽減効果を示した。バイアスリスクが低い6件のRCTを対象とした感度分析では、プラセボとの比較で統計学的に有意な疼痛軽減が認められた(平均差−10.04、95%信頼区間−17.68~−2.39)。術後MSK疼痛についても、メラトニンはプラセボと比べて有意な疼痛軽減効果を示し、その効果は従来の鎮痛薬などのアクティブコントロールと同程度であった。さらに、メラトニンは、慢性的なMSK疼痛においては睡眠の質の改善とも関連していたが、術後MSK疼痛では睡眠の質の改善とは関連していなかった。Wu氏は、「多くの患者にとって疼痛は単独で存在するものではなく、睡眠の質の低さと密接に関連している。メラトニンはその両方に作用する可能性があり、慢性疼痛を抱える人々に特に有用である」と指摘している。また、論文の上席著者で、シドニー大学(オーストラリア)運動器研究ハブのディレクターであるPaulo Ferreira氏は、「既存薬を新たな疾患に応用するドラッグ・リポジショニングの一例であり、慢性疼痛という世界的に患者数の多い疾患への応用可能性を探る研究といえる」と述べている。ただし、今回の研究で対象としたRCTのそれぞれで、メラトニンの投与量や投与タイミングは疾患により異なっていた。慢性疼痛では、1日3〜10mgが一般的であり、最も多く用いられていたのは3mgであった。一方、術後疼痛では1〜10mgの範囲で使用され、5〜6mgが最も多かった。しかし、明確な用量反応関係は確認されなかった。こうしたことを踏まえて研究グループは、「より大規模な研究によって、メラトニンの鎮痛効果を確認する必要がある」と述べている。さらに研究グループは、メラトニンを鎮痛目的で使用しようとする場合は、必ず医師と相談すべきだとしている。Wu氏は、「メラトニンは鎮痛薬の代替にはならないが、特に睡眠に問題を抱えている患者なら、医師との相談の上で既存治療の補助として使用される可能性はある」と述べている。また同氏は、メラトニンに一部の鎮痛薬と同程度の疼痛軽減効果が認められた点について、「これはメラトニンが、それらの薬の代わりになるという意味ではなく、より広い疼痛管理戦略の中で、安全性の高い追加選択肢となり得ることを示している」と説明している。(HealthDay News 2026年7月1日) https://www.healthday.com/health-news/pain-management/melatonin-shows-promise-as-safe-cheap-painkiller-review-concludes Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock