脂肪性肝疾患(脂肪肝)を有する大腸がん患者では、予後不良なタイプの肝転移が発生しやすいことが、新たな研究で示唆された。研究グループは、「この研究は、がんの進展が、腫瘍細胞そのものだけでなく、脂肪肝に伴う代謝環境の変化による影響も受ける可能性を示したものであり、患者の代謝状態に合わせた個別化治療の開発につながる可能性がある」との見解を示している。VIB-KU Leuven Center for Cancer Biology(ベルギー)のSarah-Maria Fendt氏らによるこの研究の詳細は、7月1日付で「Nature」に掲載された。研究グループによると、大腸がんはあらゆるがん診断の約10%を占めており、50歳未満におけるがん関連死亡の主要な原因の一つとなっている。大腸がん患者の最大50%で転移が発生し、その多くが肝転移である。患者の予後は、肝臓内での転移腫瘍の増殖様式によって大きく異なる。転移腫瘍の周囲に線維性の被膜が形成され、正常組織との境界が明瞭な被包型転移であれば5年生存率は73.4%であるが、正常な肝組織に浸潤しながら置き換わるように広がる置換型転移の場合では44.2%と大きく低下するという。今回の研究では、全身治療歴のない大腸がん患者206人を対象に、年齢や性別、BMI、脂肪肝と転移のタイプとの関連を検討した。その結果、病勢が進んでいる患者ほど置換型転移になりやすいことが確認された。脂肪肝は、解析した因子の中で置換型転移と有意に関連する唯一の因子であることも明らかになった。さらに研究グループは、高脂肪食を12週間与えて脂肪肝を誘導したマウスと通常食のマウスを用い、大腸がん細胞を脾臓を介して注入し、肝転移を誘発した。その結果、脂肪肝マウスでは肝転移巣が大きくなり、生存期間も短かった。また、転移巣を組織学的に評価したところ、脂肪肝マウスでは置換型転移が3.5%から53.7%へと大幅に増加したことも確認された。さらに、脂肪肝では、転移したがん細胞での脂肪酸酸化の亢進に伴い、がん原遺伝子MYCがコードするMYCタンパク質がアセチル化されて安定化することが観察された。これに伴い、がん細胞ではコラーゲンの主要な構成成分であるヒドロキシプロリンの産生が促進され、コラーゲンを足場とした増殖・浸潤に関わる変化が生じることで、置換型肝転移の形成が促進される可能性が示された。Fendt氏は、「簡単に言えば、脂肪肝は腫瘍がより攻撃的に成長するために必要な“シグナル”と“材料”の両方を提供しているということだ。これは、転移が発生するメカニズムそのものを根本的に変化させる」と述べている。研究グループは、この知見がMYCを標的とする薬剤の臨床試験において極めて有用になる可能性があるとしている。特に、脂肪肝を合併し、肝転移を有する患者を対象とすることで、薬剤の有効性をより適切に評価できる可能性があるという。Fendt氏は、「これは、患者を層別化するための強力な新しい方法になる。治療効果が最も期待できる患者を特定することで、臨床試験をより効率化でき、それが最終的には、有効な治療法を患者により早く届けることにつながる」としている。また、MYCを介した分子メカニズムが明らかになったことから、その経路を標的とした新たな治療法の開発にもつながる可能性があるとの見方を示している。(HealthDay News 2026年7月7日) https://www.healthday.com/health-news/liver-health/fatty-liver-boosts-odds-of-more-deadly-colon-cancer-study-says Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock