新たな研究で、口腔扁平上皮がん(OSCC)を1時間以内に診断できる非侵襲的なブラシ検査が、がんの検出率向上につながる可能性が示された。ブラシで採取した細胞からRNAを抽出し、対象とする遺伝子のmRNA発現量を調べる多遺伝子アッセイ「qMIDSV3」により、OSCCを感度95.7%、特異度95.1%で検出できたという。英ロンドン大学クイーン・メアリー校分子口腔腫瘍学教授のMuy-Teck Teh氏らによるこの研究結果は、6月23日付で「Biomarker Research」に掲載された。米国がん協会(ACS)によると、米国では2026年に、口腔・中咽頭がんの新規患者数は約6万480人、これらのがんによる死亡者数は約1万3,150人になると予測されている。また、研究グループによると、口腔がん患者の53%はステージ4になってから診断されている。ステージ4はがんが最も進行した状態で、治療の成功率も低くなる。口腔・中咽頭がんのリスクが高いのは、喫煙者、多量飲酒者、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染者である。さらに、日光曝露も、特に口唇がんリスクを高める。口腔がんの診断では、舌や歯茎、頬、扁桃などから組織を採取する生検が必要となる。そのため、特に繰り返し検査が必要な場合には、患者だけでなく医師も生検の実施に消極的になりがちだという。過去の研究では、マイクロバイオプシーを用いた多遺伝子アッセイであるqMIDSV2の有効性が検討された。今回の研究では、マイクロバイオプシーの代わりにブラシ検査を用いた多遺伝子アッセイ(qMIDSV3)でも同等の診断精度が得られるのかが検討された。qMIDSV3では、丸いブラシを使って口腔内の疑わしい病変から細胞を採取する。その後、採取した細胞からRNAを抽出し、OSCCとの関連が知られている2つの遺伝子(INHBA、S100A16)と、発現量を標準化するための2つの参照遺伝子(YAP1、POLR2A)の、計4遺伝子のmRNA発現量を測定し、その結果をアルゴリズムで解析して悪性指数を算出し、がんの可能性を評価する。今回の研究では、545人の患者から採取した1,090検体を解析し、ブラシ検査の有効性を検証した。解析の結果、この検査のOSCC検出の感度は95.7%、特異度は95.1%であり、偽陽性率は4.9%、偽陰性率は4.3%であった。Teh氏は、「ブラシによる細胞採取検査の性能がマイクロバイオプシーに匹敵したことには本当に驚いた。これは、この4つの遺伝子が示す生物学的シグナルの一貫性が極めて高いため、ブラシで採取した表層の剥離細胞からでも十分検出できることを示唆している」と述べている。その上で、「患者は、分子診断に基づくトリアージのために、従来のマイクロバイオプシーのような、低侵襲ではあるものの組織採取を伴う検査を受ける必要がなくなる」と強調している。研究グループは、qMIDSV3を導入することで、不必要な外科的組織生検の最大90%を回避できる可能性があると推定している。Teh氏は、「口腔がんの生存率は、どれだけ早期に発見できるかに直接関係している。しかし、現行の診断方法は大まかで、疑わしい病変が見つかった患者の多くは、最終的に良性であるにもかかわらず、生検を受けることになる。qMIDSV3は、こうした状況を変える可能性がある。この検査を用いれば、臨床医は患者を迅速かつ非侵襲的に、高い精度でトリアージできるようになる。さらに重要なのは、繰り返し実施できるため、前がん病変が持続する患者を定期的かつ系統的に経過観察し、従来よりもはるかに早い段階で口腔がんを発見できる可能性があることだ」とニュースリリースで述べている。ロンドン大学クイーン・メアリー校は現在、この検査を実用化するための商業パートナーを探しており、適切な提携先が見つかれば、約2年以内の市場投入が可能になるとしている。(HealthDay News 2026年7月9日) https://www.healthday.com/health-news/cancer/new-highly-accurate-brush-test-can-detect-mouth-cancer-within-an-hour Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: ZAY WIN HTAI -- Adobe Stock