慢性的な股関節痛に悩まされている患者にとって、人工股関節全置換術は生活の質(QOL)を大きく改善する可能性がある。しかし、術後は新しい股関節が脱臼しないよう、日常生活動作に注意を払う必要がある。こうした中、新たな研究で、より優れた設計の人工股関節インプラントによって、股関節脱臼のリスクを約7割低減できることが明らかになった。ウプサラ大学病院(スウェーデン)の整形外科医であるNils Hailer氏らによるこの研究結果は、7月2日付で「The Lancet」に掲載された。研究グループによると、大腿骨近位部骨折に対する人工股関節全置換術後に生じる最も多い手術関連合併症は脱臼で、6~10%の患者に生じる。そのため、術後の回復期には脚を組むことや床の物を拾うこと、体をひねる動作を避けるよう指導される。Hailer氏は、「人工股関節の脱臼は極めて強い痛みを伴う。脱臼が起きた場合は、鎮静処置を施した上で関節を整復する必要があり、場合によっては追加手術が必要となる。一度脱臼すると、患者は人工股関節の機能を信頼できなくなることがあるため、QOLが低下する」と説明している。この問題を改善するために開発されたのが、デュアルモビリティ(二重可動)型インプラントである。一般的な人工股関節では、大腿骨側に取り付けられた金属製やセラミック製の骨頭が、股関節側に固定された金属製カップの内側にはめ込まれたライナー内で可動する構造となっている。これに対し、デュアルモビリティ型では、人工骨頭をより大きなポリエチレン製ライナーで包み込む構造を採用し、人工骨頭とライナーの間、およびライナーと股関節側の金属製カップの間の2つの関節面で可動することで可動域を広げ、脱臼しにくくしている。研究グループは、「デュアルモビリティ型インプラントでは、脱臼が生じるまでの関節可動域を拡大することで人工股関節の安定性を高める」と説明している。なお、デュアルモビリティの概念は1970年代にフランスで開発されたが、米国で導入が進み始めたのは比較的最近であるという。研究では、スウェーデンまたは英国で大腿骨近位部骨折を起こした65歳以上の患者1,600人(女性64%)を対象に、標準的な人工股関節全置換術を受ける群と、デュアルモビリティ型インプラントによる人工股関節全置換術を受ける群にランダムに割り付けた。その結果、手術から1年後までに股関節脱臼を起こした割合は、デュアルモビリティ型インプラント群で1.3%であったのに対し、標準インプラント群では4.2%であった。これは、デュアルモビリティ型インプラント群で脱臼リスクが73%低下したことを意味する(調整ハザード比0.27、95%信頼区間0.13~0.56、p<0.0001)。また、デュアルモビリティ群では手術関連合併症の発生リスクも低かった。Hailer氏らは、「デュアルモビリティ型インプラントは標準型より高価であるものの、脱臼や合併症の減少により初期費用の増加分を相殺できる可能性がある」と指摘している。同氏らは、現在、その費用対効果について詳細な経済評価を進めているという。論文の共著者である英ロンドン大学クイーン・メアリー校のXavier Griffin氏は、「重要なのは、このデュアルモビリティ型インプラントが新たな技術や特別な訓練を必要としない点だ。外科医はすでに両方のインプラントに精通しているため、現在の診療体制のままでただちに導入できる」と述べている。(HealthDay News 2026年7月9日) https://www.healthday.com/health-news/bone-and-joint/innovative-hip-replacement-cuts-post-surgery-risk-of-dislocation-by-70 Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock