軽症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後に12週間以上持続する目の症状に関する新たな知見が、リンショーピング大学(スウェーデン)実験眼科学教授のNeil Lagali氏らにより、7月8日付で「Nature Communications」に報告された。この研究によると、軽症のCOVID-19罹患後12週間以上、最長3年にわたり、強い目の痛みや光過敏(まぶしさ)、読書時の見えづらさ、ピントの合わせにくさといった症状に悩まされる患者が存在し、通常の眼科検査ではこうした症状の原因となる異常は見つからないものの、特殊な検査で神経や免疫の異常が確認されたという。Lagali氏は、「こうした患者が訴える眼症状の原因は、標準的な眼科検査では確認できず、異常を見つけるには特殊な検査を行う必要があった。その結果、パズルのピースがつながるように症状の原因が明らかになった」と述べている。今回の研究では、軽症のCOVID-19罹患後に12週間以上持続する眼症状(persistent ocular symptom;POS)を有する患者100人と、COVID-19に罹患したもののPOSは発症していない対照者32人の目を調べた。その結果、通常の眼科検査では両群に大きな違いは認められなかった。しかし、近見時の両眼の協調運動を詳しく調べたところ、POS群では、眼球がわずかに内側へずれる「内斜位」が認められ、眼球のずれを補正する能力(融像予備力)も低下していた。また、光刺激に対する動的瞳孔測定では、暗順応後の瞳孔径と光刺激後の最小瞳孔径はいずれも対照群より大きく、瞳孔が収縮するまでの時間も延長していた。研究グループは、POSの一つである光過敏について、瞳孔反射の異常によって眼内に入る光量を十分に調節できなくなっていることが一因である可能性を指摘している。さらに、内斜位については、眼球運動を制御する神経がCOVID-19の影響を受けた可能性があると考察している。さらに、生体共焦点顕微鏡(IVCM)などを用いた詳細な検査では、POS群では角膜上皮基底下神経叢の神経線維密度の低下や、活性化した樹状細胞・T細胞の増加が認められ、角膜で炎症や免疫活性化が生じていることが示唆された。涙液のプロテオーム解析では、これらの所見を裏付ける神経障害やT細胞の制御異常、炎症に関連するタンパク質の発現パターンの変化が確認された。研究グループは、これらの結果はCOVID-19による長期的な神経炎症を示唆するものと考察している。研究グループによると、POSを有する患者の症状は日常生活に大きな支障を及ぼしており、患者の3人に1人が休職または時短勤務を余儀なくされていると回答したという。Lagali氏は、「こうした患者は日常生活で本当に大変な思いをしている。今回の研究によって目に何が起きているのかが分かり、COVID-19がどのようにしてこれらの問題を引き起こしたのかを示す重要な手がかりも得られた」と話している。研究チームは、今回の研究成果が、COVID-19罹患後のPOSのより適切な診断法や有効な治療法の開発につながることを期待している。(HealthDay News 2026年7月10日) https://www.healthday.com/health-news/coronavirus/mild-covid-can-lead-to-long-term-hidden-eye-problems Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock