

サッカーW杯の熱狂が米国を席巻する中、サッカーのもう一つの側面、すなわちサッカーが脳に及ぼす影響に光を当てた研究が報告された。中年期の元プロサッカー選手では、コンタクトスポーツの経験がない人と比べて、脳の重要な領域の萎縮がより顕著であることが明らかになった。また、元選手では、うつ症状や不安症状が多く見られ、計画や問題解決の困難を訴える傾向も認められたという。英インペリアル・カレッジ・ロンドン(ICL)のCaleigh Grace Lynch氏らによるこの研究結果は、アルツハイマー病協会国際会議(AAIC 2026、7月12~15日、英ロンドン)で発表された。
Lynch氏はニュースリリースで、「これらの結果は、元トップレベルのサッカー選手では、通常では神経変性疾患が臨床的に明らかになる以前の段階である中年から、脳の健康に測定可能な影響が生じている可能性を示唆している」と述べている。
サッカーでは、主に頭部でボールを扱うヘディングによって、頭部への反復的な衝撃が生じる。他のコンタクトスポーツでは、こうした反復的な頭部への衝撃は、反復する頭部外傷との関連が指摘されている神経変性疾患である慢性外傷性脳症(CTE)の発症に関与する可能性が報告されている。
今回の研究では、元プロサッカー選手142人と、コンタクトスポーツ経験のない同年代の健常者56人(男性43人)を比較した。元選手の内訳は、少なくとも3年間フルタイムのプロ契約を結んでいた男性126人と、英国でプロサッカープレイヤーとしてプレーしていた女性16人で、年齢はいずれも30~60歳であった。
その結果、臨床的に重要なうつ症状が認められた割合は、元プロサッカー選手で31%だったのに対し、対照群では9%であった。また、臨床的に重要な不安症状が認められた割合は、元選手で42%、対照群で25%であった。さらに元選手では、計画、集中、問題解決、日常業務の管理能力についても自己評価が著しく低いことが示された。
124人の元選手のMRI画像を用いた解析からは、記憶、注意、意思決定、感情の調節に重要な役割を果たす前頭葉、帯状回、視床などの複数の脳領域で灰白質の体積が減少していることが明らかになった。脳全体の体積も、対照群より小さかった。さらに、神経放射線科医がMRI画像を臨床的観点から評価したところ、約2%で神経変性疾患を示唆する臨床的に重要な脳萎縮が認められたという。
Lynch氏は、「客観的な認知機能検査では両群に有意な差は認められなかったものの、自覚症状や脳構造には重要な違いが観察された」と述べている。研究グループは、今後も元サッカー選手を追跡し、本研究で認められた脳の萎縮がCTEや認知症、アルツハイマー病の症状につながるかどうかを検証する予定である。
主任研究者であるICLのThomas Parker氏はニュースリリースで、「参加者を長期間追跡することで、頭部への反復的な衝撃が長期的な脳の健康や神経変性疾患にどのような影響を及ぼすのかをより深く理解し、将来の世代にとってスポーツをより安全なものにするための戦略づくりに役立てたい」と述べている。
一方、アルツハイマー病協会の最高科学責任者兼医療担当責任者で、本研究には関与していないMaria Carrillo氏は、「このような研究は、生涯を通じた脳の健康に影響する要因への理解を深めるとともに、けがの予防と継続的なモニタリングの重要性を改めて示すものだ。得られた知見は、選手、医師、スポーツ団体がコンタクトスポーツのリスクをより正しく理解し、安全に競技へ参加するための一助となる」と話している。
なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。(HealthDay News 2026年7月13日)
https://www.healthday.com/health-news/neurology/pro-soccer-players-show-signs-of-shrinking-brains
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