舌下神経電気刺激療法(HGNS)は、気道陽圧呼吸(PAP)療法を継続できない閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)患者に対する治療選択肢である。このほど新たな研究で、HGNSを受けた人ではPAP療法を継続できなかった人と比べて、初診から2年以降に糖尿病や高血圧と診断されるリスクが低かったことが示された。米シカゴ大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科のNeil Kondamuri氏らによるこの研究の詳細は、7月16日付で「JAMA Otolaryngology–Head & Neck Surgery」に掲載された。Kondamuri氏らは、「HGNSがPAP療法に代わる治療法となり得ることを支持する結果だ」との見解を示している。Kondamuri氏は、「ぐっすり眠れないことのつらさは、誰もが知っている。OSAは、その深刻さが十分に認識されていない『沈黙の危険』だ。われわれは、毎日のようにPAP装置が苦手で使っていないと話す患者を診ている。この治療法を継続できない患者がこれほど多いのであれば、同程度、またはそれ以上の二次的な健康効果が期待できる別の治療法が必要だ」とニュースリリースで述べている。OSAでは、気道が閉塞して酸素濃度が低下するたびに目が覚めるため、睡眠の質が低下する。Kondamuri氏らによると、未治療のOSAは心臓や血管に負担をかけるため、さまざまな心血管系の健康問題に関連していることが報告されているという。PAP療法は、マスクを介して一定の圧力(陽圧)をかけた空気を気道に送り込み、睡眠中に気道が閉塞しないよう開いた状態を維持する治療法である。一方、HGNSでは、舌の動きをコントロールする舌下神経の周囲に電極を巻き付けて電気刺激を与える。この電極は、胸部の皮下に植え込まれた小型デバイスにつながっており、患者が息を吸うたびに舌下神経へ弱い電気刺激を送る。刺激を受けると舌が前方へ引き出され、後方へ落ち込んで気道を塞ぐのを防ぐ。Kondamuri氏らは今回の研究で、HGNSのためのデバイスを植え込む手術を受けた3,786人のOSA患者(年齢中央値53.0歳、男性67.7%)と、適応基準を満たしていたがHGNSを受けなかった3,396人の患者(対照群、年齢中央値56.0歳、男性71.3%)を対象に、糖尿病や高血圧と診断されるまでの期間について比較した。いずれの患者も、OSAの診断を受けたがPAP療法を継続できていなかった。HGNSの効果は初診から2年以降に現れると仮定して、初診から2年以内と2年以降に分けて解析した。その結果、ベースライン時に心血管疾患(CVD)がなかったHGNS群では、初診から2年以内に糖尿病と診断されるリスクについては対照群との間に有意差がなかったが、2年以降ではリスクが81%低かった(ハザード比〔HR〕0.19、95%信頼区間〔CI〕0.09~0.38)。また、高血圧と診断されるリスクは、初診から2年以内では対照群より高かったものの(HR 1.70、95%CI 1.26~2.28)、2年以降では51%低かった(HR 0.49、95%CI 0.33~0.73)。Kondamuri氏は、「これまでの研究から、PAP療法を毎晩5~6時間程度、継続して使用できていない患者では、HGNSで示されたような二次的な健康リスクを予防する効果が得られない可能性が示されている」と指摘している。その上で同氏は、「PAP装置を使用しても十分に休息できたと感じられない場合や他の治療選択肢について知りたい場合には、睡眠医療に精通した耳鼻咽喉科医に相談し、自分の気道の解剖学的特徴や希望に合わせた治療法について検討してほしい」と助言している。ただし、今回の研究は追跡期間が短いため、HGNSが危険な不整脈や心筋梗塞、心不全などの長期的なリスク低下につながると断定するには十分ではないと、研究グループは指摘している。(HealthDay News 2026年7月23日) https://www.healthday.com/health-news/sleep-disorder/tongue-pacemaker-might-improve-sleep-apnea-patients-health Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock