経済的逆境は、精神的なストレスを増大させるだけでなく、脳の老化と関連する可能性がある——そんな研究結果が報告された。若年成人期から中年期にかけて慢性的に経済的困窮を抱えていたり世帯所得が低かった人は、53歳時点で実施された認知機能検査の成績が低い傾向にあることが示された。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のJacques Wels氏らによるこの研究は、7月23日付で「Innovation in Aging」に掲載された。持続的な経済的逆境が認知機能の加齢に伴う変化や脳の健康に長期的にどのような影響を及ぼすのかは、十分に明らかになっていない。そこでWels氏らは、英国の1946年出生コホート(2,759人)を対象に、26~53歳時の経済的逆境(世帯所得の低さ、経済的困窮)と、53歳時の認知機能、53歳から69歳までの認知機能の変化との関連を解析した。さらに、69~71歳時に脳MRI検査を受けた一部の参加者では、経済的逆境と高齢期の脳構造との関連も調べた。参加者には、26歳、43歳、53歳時点での世帯所得に加え、36歳、43歳、53歳時点で経済的困窮の有無について質問した。その結果、世帯所得が低い状態や経済的困窮を経験することが多かった人では、53歳時点における情報処理速度や言語記憶の成績が低かった。これらの人では、53歳以降の言語記憶の低下速度は比較的緩やかだったが、これは53歳時点ですでに認知機能スコアが低かったことによるものと考えられた。さらに、MRI解析からは、持続的な低世帯所得は、脳の萎縮に伴い拡大することが知られている脳室容積の増大と関連することも示された。経済的逆境と脳構造の変化との関連は、男性、幼少期に社会経済的状況が不利だった人、アルツハイマー病の遺伝的リスク因子であるAPOE ε4保有者でより強く認められた。研究グループは、本研究で対象としたコホートの世代では、男性が家計の担い手と見なされることが多かったため、経済的逆境の影響をより強く受けた可能性があると考察している。また、喫煙や飲酒などの健康に好ましくない生活習慣が多かったことも影響した可能性があるとしている。Wels氏は、「認知機能の加齢による変化を検討したこれまでの研究の多くは、経済的逆境を単一時点でしか評価していない。本研究では、数十年にわたるデータを用いたことで、認知機能に大きな影響を及ぼすのは一時的な困難ではなく、長年にわたる経済的逆境の積み重ねであることが明らかになった」とニュースリリースで述べている。一方、論文の上席著者であるUCL公衆衛生・実験医学部門教授のPraveetha Patalay氏は、「今回の結果は、経済的逆境に直面している人々を支援し、慢性的な貧困を減らすことが、将来的な認知機能低下や認知症リスクの低減につながる可能性を示唆している」との見解を示している。(HealthDay News 2026年7月24日) https://www.healthday.com/health-news/neurology/money-problems-might-make-your-brain-old-before-its-time-study-suggests Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock