乳がんの遺伝的リスクは、がんリスクを高める遺伝子変異の有無に加え、家族歴によっても変化するようだ。BRCA1またはBRCA2遺伝子変異の検査で変異陽性だった女性のうち、乳がんの家族歴がない女性での80歳までの乳がん発症リスクは6割弱であるが、家族歴を有する場合には同リスクが8割超にまで上昇することが、7月30日付で「JAMA Network Open」に掲載された研究で報告された。論文の筆頭著者である米シダーズ・サイナイ医療センターのFahima Dossa氏は、「遺伝学的検査を受ける女性の大半では、BRCA1/2遺伝子の変異が見つからない。しかし、こうした女性の多くは、本人のがん既往歴または濃厚な家族歴を理由に検査を勧められている。これらの女性における将来の乳がん発症リスクについては、これまで十分に研究されていなかった。今回の研究は、BRCA1/2遺伝子検査を受ける全ての女性のリスクをより正確に評価し、適切な助言につなげるためのデータを初めて算出したものである」と述べている。BRCA1/BRCA2遺伝子変異は、がんにつながる可能性のあるDNA損傷を修復する体の機能を妨げる。これらの遺伝子変異を有する女性での生涯の乳がん発症リスクは30〜70%に達するとされている。研究グループによると、BRCA1/2遺伝子検査は、特定のがんの既往歴や家族歴を有する女性、BRCA1/2遺伝子変異が確認されている血縁者がいる女性、またはアシュケナージ系ユダヤ人の祖先を持つ女性に推奨されている。本研究は、カナダ・オンタリオ州で実施されたコホート研究「What Comes Next Cohort Study」の一環として行われた。Dossa氏らは、2007~2016年に同州でBRCA1/2遺伝子検査を受けた女性と一般女性を1対5の比率でマッチングし、2024年9月まで追跡した。得られたデータを基に、BRCA1/2遺伝子検査の結果や家族歴に応じて、乳がんと卵巣がんの80歳までの累積発症リスクを推定した。乳がんの解析では、BRCA1/2遺伝子検査を受けた女性6,966人(年齢中央値49歳)、一般女性3万4,830人、卵巣がんの解析では、それぞれ1万3,276人(年齢中央値51歳)、6万6,380人を対象とした。その結果、80歳までの乳がんの累積発症率は、BRCA1遺伝子変異陽性者で62.1%、BRCA2遺伝子変異陽性者で66.1%、一般女性で12.0%と推定された。同様に、卵巣がんの推定累積発症率は、それぞれ56.0%、29.3%、1.5%であった。BRCA1/2遺伝子検査で意義不明変異(VUS)が認められた女性と、結果が陰性だった女性でも、80歳までの乳がん累積発症率はそれぞれ31.2%、26.3%であり、一般女性より高かった。一方、卵巣がんリスクの上昇は確認されなかった。BRCA1/2遺伝子検査で病的変異または病的である可能性が高い変異を有し、家族歴が判明していた1,248人を対象に解析したところ、80歳までの乳がんの累積発症率は、家族歴がない女性で55.8%だったのに対し、第一度近親者に乳がん患者が2人以上いる女性では86.3%に上昇した。また、病的変異陽性者のうち卵巣がんの家族歴が判明していた1,628人を対象とした解析で推定された卵巣がんの累積発症率は、第一度近親者に卵巣がん患者が1人以上いる女性では64.2%、いない女性では38.2%であった。血縁者に既知のBRCA1/2遺伝子変異があるが、自身は変異陰性だった女性での乳がん発症リスクは、一般女性と同程度だった。Dossa氏は、「今回の研究は、患者が遺伝子検査の結果について医師と話し合うことの重要性を改めて示すものだ。こうした話し合いに役立つデータを、われわれはようやく得ることができた」との認識を示している。その上で同氏は、「今回の結果に基づき、医師は、50代または60代でBRCA1/2遺伝子変異陽性であっても乳がんの家族歴がない患者には、より頻繁なマンモグラフィー検査や乳房MRI検査を推奨する一方、若年で血縁者に複数の乳がん症例が存在するBRCA1/2遺伝子変異陽性患者には、予防的乳房切除術を選択肢として提示する可能性がある」と述べている。(HealthDay News 2026年7月31日) https://www.healthday.com/health-news/cancer/family-history-plays-role-in-genetic-risk-for-breast-cancer-researchers-find Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock