患者を安心させようと気遣う医師の対応が、かえって逆効果になることがあるようだ。医師から症状は「normal」、つまりよく見られる症状と言われると、患者は「治療を受ける必要はない」と受け取り、治療を受けようとする意欲が低下する可能性が、新たな研究で示された。米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)ラディ経営大学院マーケティング分野教授のOn Amir氏らによるこの研究は、8月10日付で「Nature Human Behaviour」に掲載された。論文の上席著者であるAmir氏は、「医師は通常、患者の不安を和らげようとする善意からこのような対応を取る。だが、なぜかそれが裏目に出てしまうのだ」と述べている。医師と患者が同じ言葉を異なる意味に受け取っているのではないかというこの研究の着想は、更年期に関する研究から生まれたと研究グループは説明している。患者が、日常生活に支障を来す更年期症状について医師から「加齢に伴うよくある(normal)変化だ」と言われると、「軽視された」と感じることがあることを報告していたのである。このような医師と患者の間の認識のずれが他の健康問題にも当てはまるかどうかを調べるため、研究グループは一般の人および医療従事者計9,371人を対象に14件の実験を行った。実験では、参加者である患者に、医師が症状を「normal」と説明する場合と、そう説明しない場合の現実的なシナリオを読んでもらい、その状況でどの程度治療を受けようと考えるかを測定した。さらに、それらの患者の回答を、同じシナリオを読んで医療従事者が予測した患者の行動と比較した。医師が症状を「normal」として説明するのは、通常、患者の不安を和らげ、「自分でも対処できる」という感覚(自己効力感)を高めることが目的だ。しかし、実験からは、医師がこの言葉を使うと、患者は「症状は普通に起こることであり、治療を受ける必要はない」という意味に再解釈する可能性が示された。論文の筆頭著者であるUCSDのSeyi Lawal氏はニュースリリースの中で、「医療従事者は、患者に症状は『normal』だと伝えれば、患者が治療を受ける可能性が高まるか、悪くても影響はないと予想していた。しかし、実験での患者の反応はその逆だった」と述べている。また、これらの実験から、医師と患者の間の認識のずれを減らすための2つの簡単な方法も明らかになった。1つは、たとえ医師が症状を「normal」と表現する場合でも、治療を受けるよう明確に勧めること。もう1つは、「normal」とは、その症状が珍しくはないものの、それでも治療は必要であることを明確に説明することである。実験では、どちらの方法でも患者が治療により積極的になることが示されたという。研究グループは患者に対して、「医師から症状が『normal』と言われた場合、その言葉が何を意味するのかを確認するとよい。『normal』と言われたからといって、治療の必要がなく、その症状を抱えたまま生活するしかないと決めつけるべきではない」と助言している。(HealthDay News 2026年8月12日) https://www.healthday.com/health-news/general-health/normal-can-backfire-during-doctorpatient-discussions Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock