人工膝関節置換術(TKR)において、最先端の手術支援ロボットシステムであるMako(メイコー)システムを用いた場合と、従来の手法で手術を行った場合とで、治療成績に明確な差はないことが、新たな臨床試験で明らかになった。重篤な有害事象の発生についても同等であったという。英ロイヤル・オーソペディック病院NHS財団トラストのEdward Davis氏らによるこの研究結果は、8月20日付で「The Lancet」に掲載された。研究グループによると、この試験は、最新のロボット技術を用いたTKRと従来のTKRを比較したものとしてはこれまでで最大規模だとしている。TKRにおける手術支援ロボットシステムの使用は世界中で広がりつつあり、現在、英国ではTKR全体の6%、米国では16%、オーストラリアでは41%で使用されている。その利点について研究グループは、「このシステムを使えば、理論上は患者一人ひとりの解剖学的構造に合わせて手術方法を調整できるはずだ」と説明している。しかし、このロボットシステムを使うことで術後の患者アウトカムが本当に改善するかについては、これまで明確になっていなかった。そこで研究グループは、Makoシステムを用いたTKRと従来のTKRを比較し、臨床的有効性や費用対効果を調べるランダム化比較試験を実施した。試験は英国の10カ所の病院で実施され、33人の外科医が参加した。2021年12月21日から2023年12月13日の間に807人の患者をスクリーニングし、このうち339人(年齢中央値68.8歳、女性49%)を、Makoシステムを用いたTKRを受ける群(rTKR群、168人)と従来のTKRを受ける群(cTKR群、171人)にランダムに割り付けた。主要評価項目は、ランダム化から12カ月時点のForgotten Joint Score(FJS)とした。FJSは12項目から成る患者報告型の指標で、0~100点で算出される。0点は置換した膝関節を常に意識している状態、100点は置換した膝関節を全く意識していない状態を示す。このほか、痛みや膝の機能、生活の質(QOL)、安全性、費用対効果なども評価した。Makoシステムを用いた手術は、手術時間が平均10.5分長くなったが、手術の精度は従来の手術より高く、重篤な有害事象の増加も認められなかった。しかし、ランダム化から12カ月後のFJSは、rTKR群で49.2点、cTKR群で50.2点であり、両群間に統計学的な有意差はなかった(調整平均差−1.5、95%信頼区間−7.5~4.5、P=0.62)。また、術後の膝の機能やQOL、痛みなどの副次評価項目にも両群間で有意差はなく、手術後1~3日間の痛みやオピオイド使用量、退院までの期間にも明確な差は認められなかった。一方、12カ月間の総医療費はrTKR群でcTKR群と比べて958ポンド(1ポンド216円換算で約20万7,000円)高かった。論文の上席著者であるDavis氏は、「この試験から、MakoシステムによりTKRの精度が高まることが示された。理論上、このシステムを使えば、外科医は患者の解剖学的特徴に合わせて手術を個別化できるはずである。今回の結果は、決して手術支援ロボットシステムを否定するものではない。人工膝関節をどこに置くのが理想的なのか、また、患者一人ひとりにどう個別化するのかについて理解を深める必要がある。それができて初めて、このシステムの高度な精度を真に生かせるようになるだろう」とニュースリリースで述べている。論文の共著者である英ウォーリック大学医学部教授のAndrew Metcalfe氏はニュースリリースで、「このような技術は、患者に提供する医療に大いに役立つ可能性がある。しかし、手術支援ロボットシステムを用いたTKRについては、痛みの軽減や可動域の改善といったメリットが得られるようになるまで、まだ取り組むべきことがある」と述べている。(HealthDay News 2026年8月25日) https://www.healthday.com/health-news/bone-and-joint/robot-assisted-knee-replacement-surgery-no-better-than-traditional-surgeon-only-procedures-trial-finds Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: UHCW