国産初の手術支援ロボットシステム「hinotori」は2020年に製造販売承認を受け、国内の消化器外科領域でも導入が進んでいる。今回、hinotoriを用いたロボット支援下膵体尾部切除術(RDP)の周術期成績をda Vinci Surgical System(da Vinci)と比較した研究で、両者は概ね同等の周術期成績を示した。また、hinotori群では入院費がda Vinci群と比べて有意に低く、この差は手術時期をそろえた解析でも認められた。研究は、獨協医科大学埼玉医療センター外科の川﨑圭史氏、吉富秀幸氏らによるもので、詳細は7月30日付の「Asian Journal of Endoscopic Surgery」に掲載された。hinotoriは、メディカロイド社が開発した国産の手術支援ロボットで、名称は漫画家・手塚治虫氏の「火の鳥」に由来する。世界で広く使用されている手術支援ロボット「da Vinci」と比べ、hinotoriには、アームとトロカーのドッキングが不要、トロカー間距離の自動計測、8軸の関節機構、術者が自由に調整できる3次元ビューアーなどの特徴がある。これまでにhinotoriを消化器外科領域で使用した報告はいくつかあるものの、da Vinciと短期的な周術期成績を比較した研究は限られていた。また、両システムの周術期にかかる費用を比較した報告はなかった。このような背景から著者らは、hinotoriを用いたRDPについて、短期的な周術期成績と安全性をda Vinciと比較して検討した。研究では、獨協医科大学埼玉医療センターで2025年6月までにRDPまたは脾温存RDPを受けた73例を対象とした。da Vinciを用いたRDPは2020年7月、hinotoriを用いたRDPは2023年10月に導入された。hinotori導入後は、患者の臨床的要因や術者の好みではなく、機器の使用状況や手術スケジュールを主に考慮して使用するロボットを選択した。両システムによる手術は、同じ3人の認定を受けた専門医が担当した。患者背景、手術関連因子、術後経過などを後ろ向きに解析し、hinotori群とda Vinci群で周術期成績を比較した。また、手術器具費と入院費も比較した。hinotori群は22例、da Vinci群は51例で、年齢、性別、術前の全身状態や腫瘍の特徴など、患者背景に有意な差は認められなかった。手術時間の中央値はhinotori群381.0分、da Vinci群428.0分、出血量はそれぞれ100.0mL、62.5mLで、いずれも有意差は認められなかった。一方、術後合併症では、臨床的に意義のある術後膵液瘻(CR-POPF)の発生率がhinotori群で有意に低かった(0%対19.6%、p=0.027)。また、Clavien-Dindo分類IIIa以上の合併症もhinotori群で有意に少なかった(0%対27.4%、p=0.007)。術後入院期間もhinotori群で有意に短く(9.0日対13.5日、p=0.003)、手術費用と材料費を除いた入院費も有意に低かった(149万9,810円対173万5,355円、p=0.005)。手術器具の費用は両群でほぼ同等だった。さらに、両システムが使用可能となった2023年10月以降の症例に限定して再解析したところ、CR-POPFの発生率と術後入院期間の群間差は有意ではなくなった。一方、入院費はhinotori群で引き続き有意に低かった。著者らは、hinotoriを用いた膵体尾部切除術は安全に実施可能で、短期的な周術期成績はda Vinciと概ね同等だったと考察している。入院費は2023年10月以降の症例に限定した再解析でもhinotori群で有意に低かったが、今後はより大規模な多施設研究による検証が必要としている。一方、著者らは、症例数が少ないことや、hinotoriの導入時期がda Vinciより遅かったことによる時間的バイアス、ロボットシステムの導入・保守費用などを含まない費用分析を研究の限界として挙げている。(HealthDay News 2026年9月7日) Abstract/Full Texthttps://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/ases.70357 Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock