高血圧の薬を処方通りに飲まなくても健康への影響はそれほどないと思っている人は、その考えを改めた方がよさそうだ。新たな研究で、降圧薬の服薬アドヒアランスが低いと、降圧効果が小さくなり、脳卒中や心筋梗塞などに対する予防効果も得られにくくなることが示された。英オックスフォード大学のQianqian Yang氏らによるこの研究結果は、欧州心臓病学会学術集会(ESC Congress 2026、8月28~31日、ドイツ・ミュンヘン)で発表された。Yang氏はニュースリリースの中で、「今回の結果は、『薬は飲まなければ効かない』という言葉を裏付けるものだ。服薬アドヒアランスが低い患者では心血管系への恩恵がほとんど、あるいは全く得られなかったのに対し、服薬アドヒアランスが高い患者では血圧がより大きく低下し、心血管イベントも予防された」と述べている。研究の背景情報によると、世界では30~79歳の成人約14億人が高血圧に罹患している。高血圧は疾病負担の最も重要なリスク因子の一つである。降圧薬を服用することで心血管イベントの発生を減らせることが明らかにされているにもかかわらず、高血圧患者のおよそ半数は、医師の処方通りに服薬していないという。今回の研究でYang氏らは、12件の降圧薬試験に参加した11万5,389人のデータを解析した。このうち、9試験に参加した9万1,339人から服薬アドヒアランスを経時的に評価できるデータが得られた。これらの試験は、降圧治療を行う介入群と、プラセボまたはより強度の低い治療を行う比較群を比較していた。研究グループは、割り当てられた治療薬を80%以上服用していた参加者を「服薬アドヒアランスが高い」、80%に満たなかった参加者を「服薬アドヒアランスが低い」として分類した。その結果、平均服薬率(処方通りに服薬した割合)は、介入群では1年時点の88%から5年時点には80%に、比較群では87%から77%に低下していた。Yang氏は、「試験という管理された環境においてさえ、服薬アドヒアランスは時間の経過とともに低下することが明らかだった」と述べている。比較群と比べて介入群の収縮期血圧は、服薬アドヒアランスが高い参加者では5.2 mmHg低かったのに対し、服薬アドヒアランスが低い参加者では3.0 mmHg低かった。また、服薬アドヒアランスが高い参加者では、介入群の主要な心血管疾患(脳卒中、心筋梗塞または虚血性心疾患、死亡または入院に至る心不全)の発症リスクは比較群より11%低かった。一方、服薬アドヒアランスが低い参加者では、介入群と比較群との間で同リスクに有意差は認められなかった。研究グループは、「この結果は、高血圧を管理する際には、医師が、処方通りに服薬を続けることの重要性を強調する必要があることを示している」と述べている。ESCコミュニケーション委員会委員長であるFelix Mahfoud氏もこれに同意し、「服薬アドヒアランスの低さがコントロール不良の高血圧の一因となっていることを、われわれは長年軽視してきた。患者が命に関わる治療の効果を十分に得られるよう、服薬アドヒアランスの評価を高血圧の日常診療の一部とすべきである。医療提供者としてわれわれは、服薬を妨げている可能性がある要因について、患者と率直に、批判を交えることなく話し合い、服薬アドヒアランスの向上を支援するべきだ」と述べている。なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。(HealthDay News 2026年8月28日) https://www.healthday.com/health-news/cardiovascular-diseases/sticking-to-bp-meds-lowers-heart-risk-study-finds Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock