「低テストステロン」は注目を集めている健康トピックであり、年齢を重ねた男性に対し、テストステロン(T)がまさに「若返りの泉」であるかのように宣伝されている。しかし、T値が高過ぎるのも、心臓の健康には良くないようだ。新たなレビューで、T値が低い男性と高い男性はいずれも、不整脈の一種である心房細動(AF)のリスクが高まる可能性が示唆された。米カンザスシティ退役軍人医療センターのRajat Barua氏らによるこのレビューは、9月1日付で「Journal of the Endocrine Society」に掲載された。Barua氏は、「T値は高過ぎても低過ぎても、それぞれ異なる生物学的機序を介してAFリスクを高めるようだ。つまり、テストステロン補充療法(TRT)では、投与量と目標値の双方が重要だということだ」とニュースリリースの中で述べている。これまで、T値が低いことはAFリスクの上昇と関連付けられてきたが、最近の研究では、T値が高いことや中高年男性に広く処方されているTRTもAFリスクの上昇と関連する可能性が示唆されている。AFは脳卒中リスクを高め、生涯にわたり抗凝固療法が必要になることもある。研究グループは今回、T値やTRTとAFとの関連を調べた過去の研究のナラティブレビューを実施し、T値が低い場合と高い場合のAFリスクを検討した。しかし、その結果は一貫していなかった。性腺機能低下症で心血管疾患または複数の心血管リスク因子を有する5,246人(45~80歳)を対象にした2023年のTRAVERSE試験では、TRT群のAF発生率は3.5%、プラセボ群では2.4%であり、TRT群で有意に高かった。一方、106件のプラセボ対照ランダム化試験を統合した最も包括的なメタ解析では、TRTによるAFリスクの有意な上昇は認められていなかった(オッズ比1.44、95%信頼区間0.46~4.46)。また、地域在住の高齢男性4,570人を対象としたASPREE研究の事後解析では、T値の第3五分位群と比べて、第4・5五分位群ではAFリスクがそれぞれ約1.9倍(ハザード比1.91)、約2.0倍(ハザード比1.98)であった。研究グループによると、こうした疫学研究や細胞レベルの研究を総合すると、T値が低い場合と高い場合の双方でAFリスクが上昇するU字型の関係が示唆されたという。研究グループは、T値は心臓の電気的システムに影響を及ぼすため、T値が低値でも高値でもAFを起こしやすくする可能性があることを指摘する。最近の基礎研究では、低T値では心筋細胞内のカルシウム調節の異常、高T値ではカリウム電流の変化などを介して、それぞれ異なる仕組みでAFが起こりやすくなる可能性が示唆されている。Barua氏は、「このレビューが主張しているのは、治療は患者ごとに個別化し、モニタリングを行うべきだということである」と述べている。具体的な対応として研究グループは、医師はT値を正常とされる範囲の上限近くまで高めるのではなく、中央付近に戻すことを目指すべきであり、総T値では350~550 ng/dL程度が1つの目安になるとしている。ただし、この総T値の範囲は観察研究から推定されたもので、前向き研究では未検証である。また論文では、この数値を絶対的な目標とはせず、患者ごとに個別化する必要があるとしている。このほか、血中T濃度が安定しやすい製剤を使用することが望ましく、その際には心拍リズム、ヘマトクリット値、血圧、腎機能、肝機能を注意深くモニタリングする必要があるとしている。さらに、TRTを開始する前には、肥満、睡眠時無呼吸、高血圧、飲酒など、AFリスクに影響し得る要因も考慮すべきことも述べられている。(HealthDay News 2026年9月1日) https://www.healthday.com/health-news/men-health/high-testosterone-increases-risk-of-heart-rhythm-disorder-review-finds Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: jarun011 -- Adobe Stock