大きな手術を受ける高齢者では、手術前から心理的支援と薬物療法の最適化を組み合わせた介入を行うことで、術後の抑うつ症状や不安症状が改善する可能性があることが、新たなランダム化試験で示された。米ワシントン大学医学部麻酔科教授のJoanna Abraham氏らによるこの研究結果は、9月9日付で「JAMA Network Open」に掲載された。筆頭著者であるAbraham氏は、「手術前後の時期は、リスクが高まる時期であると同時に介入を行う機会でもある。手術によるストレスによって不安症状や抑うつ症状が悪化し、患者の回復や健康全般に影響する可能性がある一方で、この時期は、こうした問題を早期に見つけ、必要な支援につなげる重要な機会でもある」とニュースリリースの中で述べている。研究グループによると、米国では、手術を受ける高齢者の最大33%が術前に抑うつ症状を、22%が不安症状を経験している。また、高齢患者では、鎮静薬や筋弛緩薬、睡眠補助薬など、脳に作用する複数の薬剤を服用していることも多い。今回の研究には、術前に臨床的に意味のある抑うつ症状または不安症状を有しており、心臓手術、がん手術、または整形外科手術を予定していた60歳以上の患者306人(平均年齢68.5歳、女性68.3%)が参加した。参加者は、周術期に心理的支援と薬物療法の最適化を組み合わせた介入を受ける群と強化された通常のケアを受ける群に153人ずつランダムに割り付けられた。両群には、マインドフルネス、睡眠、脳の健康に関する教育資料が提供された。これに加えて、介入群では、ソーシャルワーカーやメンタルヘルスカウンセラーなどによる心理的支援が術前に開始され、術後も約3カ月間継続された。さらに、薬剤師チームが老年精神科医の監督の下で患者ごとに服用薬を見直し、不適切な可能性のある中枢神経系作用薬の減薬や、抗うつ薬の用量の最適化などを行った。一方、対照群では、これらの教育資料の提供を含む強化された通常ケアが行われた。参加者の抑うつや不安の症状は、Patient Health Questionnaire–Anxiety and Depressive Symptom(PHQ-ADS)尺度で評価された。その結果、ベースラインから術後3カ月までのPHQ-ADSスコアの低下幅は、介入群の方が対照群より有意に大きかった(平均差2.20ポイント、95%信頼区間〔CI〕0.16~4.24)。介入の効果は受けた手術の種類により異なり、対照群と比べてPHQ-ADSスコアの低下幅が統計学的に有意に大きかったのは、がん手術群のみであった(平均差4.93ポイント、95%CI 1.51~8.36)。一方、心臓手術群の平均差は2.68ポイント(95%CI −0.98~6.35)、整形外科手術群は−1.11ポイント(95%CI −4.62~2.40)であり、いずれも対照群との間に有意差は認められなかった。また、患者は、この周術期介入について、受け入れやすさ、適切さ、実施しやすさの点で肯定的に評価した。論文の上席著者で米ワシントン大学医学部精神医学部門長のEric Lenze氏は、「術前に体の状態を整えることの重要性は認識されているが、心や脳を整えることも同じくらい重要である。大きな手術を受ける患者は、その後の生活がより良くなることを望んでいる。今回の研究は、心の健康に配慮し、薬剤を最適化することが、その実現に役立つ可能性を示している」とニュースリリースの中で述べている。Abraham氏は、「このケアモデルが有望である理由の1つは、実際の医療現場で提供しやすいことである。患者も医療従事者も、このプログラムは無理なく実施でき、既存の手術診療の流れに組み込みやすいと感じていた。積極的なメンタルヘルスケアを行うことが、病院システムの負担になるとは限らない」と述べている。(HealthDay News 2026年9月10日) https://www.healthday.com/health-news/mental-health/pre-surgery-therapy-might-boost-seniors-recovery-study-finds Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Pormezz -- Adobe Stock