精神科の診断に確実性を求める人をがっかりさせるかもしれない研究結果が報告された。コペンハーゲン大学(デンマーク)教授で精神科医のJulie Nordgaard氏らによる研究で、文書でまとめられた同一の患者症例を基に精神科医や精神科研修医などが診断した場合、診断が一致するのは55%に過ぎないことが示された。Nordgaard氏は、「この一致率は憂慮すべき低さだ。実際のところ、この一致率は、そもそも標準化された診断基準が開発されるきっかけとなった1970年代に行われた一部の研究で報告された水準と同程度である」と述べている。この研究の詳細は、7月29日付で「Frontiers in Psychiatry」に掲載された。米国精神医学会(APA)の「精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM)」のような精神科診断の手引きは、患者を診断する際に医療従事者が文字通り「同じページを見る」、すなわち共通の基準で診断できるよう作成されたものである。精神疾患の診断基準を明確にしたDSM-IIIの導入以降、診断の信頼性に関する問題はおおむね解決されたと考えられてきた。しかし、それを体系的に実証した研究は乏しく、近年では診断の信頼性が十分に改善していない可能性を示す研究も増えている。今回の研究でNordgaard氏らは、世界保健機関(WHO)が作成したICD-10の精神疾患の診断基準を満たすよう作成した7症例とICD-10症例集から改変した2症例の全9症例の文書を用意した。その上で、19カ国から集めた精神科医、精神科研修医、精神科診療を行うその他の医師、計1,038人に、9症例の中から2症例ずつをランダムに割り当て、ICD-10に基づく30種類の選択肢から診断を選ぶよう求めた。9症例の内訳は、統合失調症3例(妄想型2例、破瓜型1例)、統合失調型障害、双極性感情障害、うつ病エピソード、全般性不安障害、強迫性障害、情緒不安定性人格障害が各1例であった。その結果、9症例に対して計1,902件の診断が下されたが、同じ症例を提示された2人の医師間での診断一致率は約55%であった。あらかじめ設定された参照診断との一致率は全体で66%であり、特に一致率が低かったのは統合失調症(3例)と統合失調型障害(1例)であった。研究の筆頭著者で、同大学の博士課程に在籍するMateo Boberg氏は、「統合失調症とも統合失調型障害とも診断し得る症例では、特に高い水準の不一致が生じた。こうした症例の多くでは、参加者間の一致率は50%を大きく下回っていた」と述べている。同氏は、診断をめぐる混乱の一因が、同じ症状がさまざまな疾患で現れ得ることにある可能性を指摘している。例えば、強迫的な思考は、強迫症でも統合失調症でも生じ得ると同氏は説明している。Nordgaard氏は、精神科医らの診断が一致しないことについて、「精神科医の仕事の質が低いのではない。むしろ、診断システムが存在していても、臨床医によって症状の解釈の仕方や、どの特徴を最も重要と考えるかが依然として異なっていることを反映している。より高い水準のコンセンサスが必要であり、そうでなければ患者は診断や治療が変更されるリスクにさらされる」と述べている。論文の共著者である同大学教授のMads Gram Henriksen氏は、「この研究結果は精神医学研究にも影響を及ぼす可能性がある」と指摘する。同氏は、「研究では、自分たちが何を研究しているのかを正確に把握することが不可欠である。人格障害(パーソナリティ障害)の治療に関する研究に登録された参加者の相当部分が、実際には統合失調症に罹患しているのであれば、その研究結果を解釈することは難しくなる。治療の効果が認められた、あるいは認められなかったのは、いったいどちらの疾患に対してなのか。人格障害なのか、それとも統合失調症なのか」と述べている。一方Nordgaard氏は、ICD-10には200を超える精神疾患が含まれており、その複雑さが正確な診断を難しくしている可能性についても指摘している。(HealthDay News 2026年9月14日) https://www.healthday.com/health-news/mental-health/psychiatrists-disagree-on-diagnosis-nearly-as-often-as-they-agree Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock