健康的な食事は老化の速度を遅らせる可能性があり、そのために特定の食事法にこだわる必要はないようだ。新たな研究で、さまざまな食事指標で食事の健康度がより高いと評価された人ほど、DNAメチル化で評価した生物学的老化が遅い傾向にあることが示された。DNAメチル化とは、DNAの塩基にメチル基が付加される化学的修飾の一つである。DNA配列を変えることなく遺伝子の働き方を調節するこのような仕組みは、エピジェネティクスの一つである。ドイツ神経変性疾患センター(ドイツ)の人口健康科学部門ディレクターであるMonique Breteler氏らによるこの研究結果は、8月29日付で「Nature Communications」に掲載された。この研究では、ドイツの2つの一般住民コホートのデータを用いて、10種類の食事指標のスコアと生物学的老化との関連を検討した。また、各食事指標のスコアと関連するDNAメチル化パターンを調べ、食事に関連したDNAメチル化部位について機能解析を行うことで、食事の質と健康との関連に関わる生物学的な仕組みを検討した。生物学的老化の推定には、GrimAA、PhenoAA、DunedinPACEの3種類の生物学的老化指標を用いた。評価した10種類の食事指標は、地中海食スコア、DASH食、MIND食、代替健康食指数(AHEI)、北欧式ダイエットスコア、植物性食品中心の食事指数(PDI)、健康的な植物性食品中心の食事指数(hPDI)、不健康な植物性食品中心の食事指数(uPDI)、食事性炎症指数(DII)、EAT–Lancet食スコアであった。Rhineland Studyの6,470人(平均年齢56.3±13.6歳、女性57%)を対象に主解析を行い、さらに別コホートで検証も行った。論文の筆頭著者で、ドイツ神経変性疾患センターのJuliana Tavares氏は、「生物学的老化を推定するため、いわゆるエピジェネティック時計と呼ばれる3つの異なる手法を用いた。そのために最先端技術を活用し、その結果、DNA上の約85万カ所を調べることができた。これは、これまでの研究の多くと比べて、およそ2倍の数である」と述べている。10種類の食事指標の全てで食事の健康度が上位25%に入った人(uPDIとDIIではスコア下位25%、その他の指標では上位25%)はわずか18人で、少なくとも9種類で食事の健康度が上位25%に入った人でも77人にとどまった。Tavares氏は、「同じ人でも、ある食事指標のスコアは高く、別の食事指標のスコアは低いということがあり得た。言い換えると、ある指標で健康的な食事をしている人が、別の指標でも健康的な食事をしているとは限らないということだ。われわれのデータによると、全ての指標で同時に健康的な食事をしていると見なされる人は、ほとんどいなかった」と述べている。解析の結果、健康的な食事の遵守度が高いことは概してエピジェネティックな老化の遅さと関連し、一方で不健康な食事の遵守度が高いことは逆方向の関連を示した。関連の強さは食事指標によって異なっていた。また、この関連は、現在喫煙している人でより明瞭であった。この集団では、地中海食スコア、DASH食、AHEI、北欧式ダイエットスコア、PDIスコアが高いこと、またはDIIスコアが低いことは、3種類の生物学的老化指標の低値と関連していた。さらに、DNAメチル化との有意な関連が認められた9種類の食事指標では、関連するDNAメチル化部位そのものの重なりは小さかった。一方、これらのDNAメチル化部位が関与する生物学的経路のうち、70%を超える部分が食事指標間で共通であった。これらの共通経路には、細胞構造、細胞シグナル伝達、代謝など、老化や慢性疾患に関わる過程が含まれていた。また、いくつかの経路は特定の食事指標に固有であった。例えば、大動脈弁や心臓弁の発生・形態形成に関係する経路はDASH食に、認知、学習、記憶や中枢神経系の神経軸索形成に関係する経路はMIND食に特有であった。Tavares氏は、「食事法の間には測定可能な違いがあるものの、絶対的な差はわずかである。重要なのは全体像である。要するに、老化の進行を遅らせるという点では、健康的な食事法は1つだけではなく、好ましい関連を示すさまざまな食事法がある」と述べている。その上で同氏は、「完璧な食事をする必要はない。それが今回の研究から得られる最も実践的なメッセージかもしれない」とコメントしている。(HealthDay News 2026年9月18日) https://www.healthday.com/health-news/nutrition/healthy-food-not-one-diet-linked-to-slower-aging-study-claims Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock (参考情報)Abstract/Full Texthttps://www.nature.com/articles/s41467-026-77064-4