変形性膝関節症(OA)に対する低線量放射線治療(low-dose radiotherapy;LDRT)により、症状が緩和され、疾患の進行が遅くなる可能性が、新たな研究で示唆された。米ロヨラ大学の放射線腫瘍医であるNagendra Koneru氏らがOA患者292人を対象にロシアで実施したこの研究は、米国放射線腫瘍学会年次学術集会(ASTRO 2026、2026年9月26~30日、米ボストン)で発表された。Koneru氏は、「LDRTを受けた患者では疼痛と機能の改善が持続し、MRIによる評価では関節構造の悪化が少なかった。数年後に障害認定を受けた患者が少なく、グレード2(初期)の患者での人工膝関節置換術も少なかった。これらの結果を総合すると、この治療がOAのより長期的な経過に影響を及ぼす可能性が浮上する」とニュースリリースで述べている。LDRTでは、がん治療に用いる線量よりもはるかに低い線量の放射線を照射し、関節内の炎症を軽減する効果が期待されている。研究グループによると、炎症はOAを悪化させ、その進行を速める可能性がある。運動、薬剤や注射、健康的な体重の維持によって症状を緩和することはできるが、疾患の進行を遅らせる効果はほとんどない。この試験には、X線画像に基づくKellgren-Lawrence分類でグレード0~2(OAなし~初期)と判定された症候性OA患者292人が参加した。グレード0の患者では、X線画像上に明らかなOA所見は認められなかったものの、MRIではOAを示す所見が確認されていた。参加者は、OAに対する遅効性症状改善薬(SYSADOA)であるグルコサミンとコンドロイチンの投与のみを受ける群(対照群)と、これらの薬剤の投与に加えLDRT(総線量4.5 Gyを10回に分けて照射)を受ける群(LDRT群)に146人ずつランダムに割り付けられた。疼痛、身体機能、生活の質(QOL)、およびMRIによる関節の構造的変化を36カ月まで評価し、障害認定と人工膝関節置換術については地域の健康登録データとの照合により中央値11.9年間追跡した。その結果、LDRT群では対照群と比べて、疼痛の軽減、身体機能とQOLの改善がより大きく、その効果も長期にわたって持続した。MRIでは、軟骨の変性や骨髄浮腫の進行が対照群よりも少なく、膝関節全体の構造的変化を評価するWORMSスコアのベースラインからの変化量は、12カ月時点でLDRT群が-0.3点、対照群が+0.9点、36カ月時点ではそれぞれ+0.5点、+2.3点であり、いずれの時点でも群間差は有意であった。長期追跡では、LDRT群で対照群に比べてOAによる公的な障害認定を受けるリスクが67%低かった(調整ハザード比0.33、95%信頼区間0.18~0.59)。特にLDRTの恩恵が大きかったのはベースライン時にグレード2だった参加者で、障害認定を受けた参加者の割合は、LDRT群で31.0%であったのに対し、対照群では61.1%であった。また、この患者群では、人工膝関節置換術を受けた割合も、LDRT群で14.3%にとどまったのに対し、対照群では36.1%に上った。研究グループによると、LDRTは、欧州の一部地域では数十年にわたりOAの症状緩和のために日常的に用いられており、今回の結果は驚くものではないという。Koneru氏は、「グレード2は、OAがすでに明らかになっているものの、広範な関節損傷はまだ生じていない段階を示している可能性がある。こうした患者で障害認定が少なく、人工膝関節置換術も少なかったことは、特に有望である。早い段階で炎症を治療することで、疾患の長期的な経過を変えられるかどうかを検討する機会があることを示唆している」と指摘する。その上で、「次の段階は、LDRTを受ける人と、実際には放射線を照射しない『偽』の処置のみを受ける人を比較する多施設共同ランダム化試験である」としている。なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。(HealthDay News 2026年9月30日) https://www.healthday.com/health-news/pain-management/low-dose-radiation-could-help-slow-knee-arthritis Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock