

脳卒中によって上肢の運動機能に障害が生じた人の回復経過を、手首装着型の加速度計と機械学習を用いて評価する新たな指標が開発された。この指標により、日常生活の中の動作データから回復を継続的に把握できる可能性があるという。米マサチューセッツ大学アマースト校情報・コンピューター科学准教授のSunghoon Ivan Lee氏らによるこの研究結果は、9月30日付で「Science Translational Medicine」に掲載された。Lee氏は、「ウェアラブルデバイスのデータから患者の運動障害の重症度に関する情報を取り出し、医療従事者が介入の効果を判断するために利用できることを実際に示したのは、われわれが初めてだ」と述べている。
同大学のニュースリリースによると、米国では毎年79万5,000人以上が脳卒中を発症し、発症直後には患者の最大77%に上肢の運動障害が見られるという。また、脳卒中患者の約40%では慢性的な症状が続き、自立した生活を送る上で大きな支障となる。
研究グループによると、現在、上肢の運動機能の回復は、主に医療従事者による対面での検査によって評価されているが、1回に約30分かかるため、頻繁に実施することが難しい。そこでLee氏らは、健常者、亜急性期(発症後約1週間~6カ月)および慢性期(発症から6カ月以上が経過)の脳卒中患者を含む215人の参加者から、日常生活の中で記録された約2万3,000時間分の加速度計データを収集し、運動機能回復を評価する指標「デジタル上肢パフォーマンススケール(DAPS)」を開発した。DAPSでは、手首に装着した加速度計で記録された上肢の動きのデータを、機械学習アルゴリズムを用いて解析する。Lee氏によると、患者の運動障害の重症度は、腕をどれだけ動かしているかだけでは十分に判断できない。そこでDAPSの解析では、動作量に加え、動きの速さや動作の特徴なども評価に取り入れているという。
モデルの学習には、亜急性期の患者(61人)と健常者(75人)の加速度データ、および臨床評価尺度の得点を用いた。さらに、慢性期患者(79人)のデータを使い、モデルの性能を検証した。その結果、亜急性期の患者では、DAPSは従来の評価方法より測定結果のばらつきが小さく、運動機能のわずかな変化を捉えられる可能性が示された。慢性期の患者でも評価の安定性と従来尺度との相関が認められたが、回復に伴う変化を捉える性能については、さらに検証が必要とされた。また、シミュレーションでは、DAPSを評価指標として用いることで、臨床試験に必要な参加者数を従来の尺度を用いた場合よりも60%以上減らすことが可能と推定された。
Lee氏は、現在のリハビリについて、「患者もセラピストも、治療の途中で患者が治療にどのように反応しているのかを明確には把握できない。現在、医療従事者は、処方した運動に患者が反応しているかどうかを確認できず、患者も自分の回復がどの程度進んでいるかを知る手段がない」と指摘する。その上で、将来的には患者と医療者が日々の回復経過を確認し、リハビリの内容を調整するためにDAPSを活用できる可能性があるとの見方を示している。
対面での評価が特定の時点の状態を捉えるのに対し、ウェアラブルデバイスでは日常生活中の動作を継続的に記録できる。研究グループは、患者が自分の回復経過を確認することで、リハビリにより積極的に取り組み、継続する意欲が高まる可能性もあると考えている。(HealthDay News 2026年10月1日)
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