アスピリンには、大腸がんの発症リスクを下げ、再発を防ぐ可能性があるとして、大きな関心が寄せられている。しかし、スカンジナビアで行われた第3相臨床試験で、大腸がんの肝転移に対する根治的治療後にアスピリンを投与しても再発または死亡リスクは低下しないことが示された。オスロ大学(ノルウェー)のSheraz Yaqub氏らによるこの研究は、9月23日付で「The Lancet Gastroenterology & Hepatology」に掲載された。論文の筆頭著者であるYaqub氏は、「アスピリンは、長年広く使われてきた、安価で入手しやすい薬であり、がんの再発リスクも下げられる可能性に大きな関心が寄せられている。今回の結果は、こうした治療を新たな患者集団に導入する前に、厳密なランダム化試験で検証する必要がある理由を示している」と述べている。大腸がんでは肝転移が多く認められ、肝転移に対する根治を目指した治療後に再発することも珍しくない。アスピリンは前述のように、大腸がんの発症・再発予防に役立つ可能性が示されていたが、転移がんの治療後における効果については明確になっていなかった。Yaqub氏らは今回、根治を目指した大腸がん肝転移の治療を受けた患者466人をアスピリン群またはプラセボ群にランダムに割り付ける比較試験を実施した。このうち、実際に試験薬の投与を開始した428人(平均年齢62.2歳、男性64%)を解析対象とした。対象者は、アスピリン160 mg/日を投与する群(217人)とプラセボを投与する群(211人)で構成されており、投与は、再発、死亡、または試験薬の投与中止のいずれかが起こるまで最長3年間行われた。主要評価項目は無病生存期間(DFS)であった。その結果、アスピリン群でプラセボ群と比べてがんの再発または死亡リスクの有意な低下は認められなかった(ハザード比1.08、95.44%信頼区間0.85~1.38)。DFSの中央値はアスピリン群で1.13年(同0.92~1.44)、プラセボ群で1.40年(同1.11~1.69)であった。36カ月時点の全生存率は、アスピリン群で76%(95%信頼区間69.4~82.7)、プラセボ群で85%(同79.5~90.8)であり、アスピリン群で有意に低かった(死亡のハザード比1.64、同1.01~2.65)。ただし、全生存期間は副次評価項目であり、本試験は全生存期間の差を検証することを主目的として設計されたものではないため、この結果は慎重に解釈する必要がある。安全性については、重篤な有害事象がアスピリン群で217人中17人(8%)に24件、プラセボ群で211人中4人(2%)に5件発生した。アスピリン群でプラセボ群よりも多く認められた臨床的に重要な有害事象または重篤な有害事象としては、心筋梗塞(2件対0件)、鼻出血(4件対0件)、十二指腸潰瘍(2件対0件)、脳出血(2件対0件)があった。治療に関連する死亡は認められなかった。一方、最近行われた別の試験では、非転移性大腸がんの特定の患者集団において、アスピリンによる再発リスクの低下が示された。本論文の上席著者であるオスロ大学のKjetil Taskén氏は、「アスピリンの抗がん作用は、生物学的・臨床的な状況によって異なる可能性がある」と述べている。ただし、留意すべき点が1つある。この試験で検討したのは、大腸がんの肝転移に対する根治を目指した治療後に、新たにアスピリンの服用を開始した場合である。著者らは、別の医学的な理由ですでにアスピリンを服用している患者については、今回の結果を服用中止の理由と捉えずにアスピリンの服用を継続し、変更する場合は事前に医師に相談すべきだとしている。(HealthDay News 2026年10月6日) https://www.healthday.com/health-news/cancer/aspirins-role-in-colon-cancer-may-depend-on-disease-stage Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock