子どもが注意欠如・多動症(ADHD)を発症するリスクには、胎児期からの要因が関わっている可能性があるようだ。新たな研究で、妊娠中の母体の胎盤増殖因子(placental growth factor;PlGF)と呼ばれるタンパク質の血中濃度が低いほど、生まれた子どもが後にADHDと診断されるオッズが高いことが示された。米アイオワ大学精神医学・産婦人科学分野のSerena Gumusoglu氏らによるこの研究結果は、「JAMA Psychiatry」に9月23日掲載された。Gumusoglu氏は、「今回の研究は、神経発達リスクが胎児期に端を発することを示すエビデンスを補強するものであり、胎盤が子どもの神経発達に大きな影響を及ぼしている可能性を示唆している。PlGFのような妊娠や母体の健康状態に関連していることが明らかになっている因子から胎児の脳の発達についても何らかの情報が得られる可能性を示した研究結果であり、極めて興味深い」とニュースリリースで述べている。研究グループによると、米国では3~17歳の子どもの最大10%がADHDを有すると推定されている。ADHDやその他の神経発達障害は出生前の要因が関与している可能性があり、胎盤や母体の健康状態とも関連することを示唆するエビデンスが蓄積されている。PlGFは、胎盤内の血管の発達、胎児の発育、胎児と胎盤の間の血液循環に不可欠である。妊娠高血圧腎症や胎児発育不全などの妊娠合併症ではPlGFが減少することが知られているが、妊娠中の胎盤および母体の血管新生因子が子どもの神経発達と関連しているのかについては、ほとんど解明されていない。Gumusoglu氏らは今回、176件の妊娠(母親の平均年齢30.2歳)の第1、第2、第3トリメスター(それぞれ、妊娠初期、妊娠中期、妊娠後期)に採取された血液検体を用いてPlGFの血漿中濃度を測定し、生まれた子どものその後のADHD診断との関連について検討した。176人の出生児のうち、54人はADHDと診断された。解析の結果、第1トリメスターおよび第2トリメスターのPlGF濃度と子どものADHDリスクとの間に関連は認められなかったが、第3トリメスターのPlGF濃度とADHDリスクとの間には関連が認められた。また、PlGF濃度の妊娠期間中の推移は、後にADHDと診断された子どもの母親と、診断されなかった子どもの母親との間で異なっており、前者では、妊娠後期に通常見られるPlGF濃度の上昇が認められず、同時期の濃度も後者に比べて有意に低かった。さらに、妊娠後期にPlGF濃度が1標準偏差(SD)低いごとに、子どもが後にADHDと診断されるオッズは2.6倍高いことも示された。この関連は、子どもの性別、妊娠高血圧腎症、胎児発育不全などの影響を調整した後も認められた。Gumusoglu氏は「妊娠合併症などの影響を調整しても関連が認められたことは重要だ。これは、PlGF濃度の低さが、単に妊娠中の健康上の問題を反映しているだけではないことを示している。本研究結果は、臨床的に何らかの診断を受けていない妊娠であっても胎盤に微細な変化が生じており、それが子どもの神経発達上の違いにつながっている可能性を示唆している」と述べている。一方、妊娠中の血管の健康や機能に関与する別のタンパク質であるエンドセリン-1(ET-1)の濃度に関しては、いずれの妊娠期においても子どものADHDリスクとの間に関連は認められなかった。ただし、Gumusoglu氏は今回の研究が単一の医療機関における比較的少数の妊娠を対象としたものであることに言及し、結果の慎重な解釈を求めている。また、この潜在的な関連を確認し、その詳細を明らかにするには、さらなる研究が必要との見解を示している。Gumusoglu氏は、「今回の研究では、従来、産科領域の問題と考えられてきたPlGFの異常が数年後の子どもの神経発達アウトカムに関連していることが示された。今後、より大規模な集団で今回の結果が再現され、マウスを用いた研究によって因果関係が裏付けられれば、妊娠中のPlGF濃度を測定することで、より早期から発達を経過観察することが有益な子どもを特定できる可能性がある」と述べている。(HealthDay News 2026年10月6日) https://www.healthday.com/health-news/pregnancy/placenta-issues-might-contribute-to-adhd-risk Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock