白内障手術で一般的に使われている人工水晶体(眼内レンズ)に、緑内障治療薬を徐々に放出する機能を持たせた人工水晶体が開発され、その有望性が臨床試験で示された。この新型人工水晶体には、緑内障治療薬として広く使われているビマトプロストを含む小さなパッドが取り付けられており、薬剤が眼内に徐々に放出される仕組みになっている。米バンダービルト大学医療センターの眼科医であるJeffrey Kammer氏らによるこの研究結果は、米国眼科学会年次総会(AAO 2026、10月10~12日、米ニューオーリンズ)で発表された。Kammer氏は、「一般的な眼疾患である白内障と緑内障を1回の手術で同時に治療できることを想像してみてほしい。現在開発中の技術で、これに匹敵するものはない」とニュースリリースで述べている。緑内障では、眼圧の上昇などによって視神経が障害されることで視野が狭くなり、進行すると視力を失うこともある。現時点で、病気の進行を遅らせる効果が証明されているのは眼圧を下げる治療であり、通常はまず、毎日の点眼薬による治療が行われる。しかし、1日1~2回の点眼を継続することは、患者にとって容易ではない。一方、高齢者では、眼の中の水晶体が濁る白内障を併発する人も多い。白内障では、濁った水晶体を取り除き、代わりに人工水晶体を挿入する手術が行われる。この手術は、世界で最も広く実施され、結果の予測も容易な手術の一つだという。今回の第1/2相臨床試験では、軽度~中等度の開放隅角緑内障または高眼圧症が認められ、白内障の手術を受ける予定だった106人の成人患者を対象に、ビマトプロストを組み込んだ人工水晶体を用いることで、白内障の治療と同時に眼圧を下げることができるかを検討した。試験参加者は、高用量(78 μg)、または低用量(39 μg)のビマトプロストを組み込んだ薬剤放出型人工水晶体を挿入する群と、通常の人工水晶体を挿入し、緑内障治療薬のチモロールを1日2回点眼する対照群の3群に2対1対1の割合で割り付けられた。その結果、治療前の平均眼圧は24.6 mmHgから26.3 mmHgの範囲であったのが、治療から12カ月後には、高用量群で平均15.9 mmHg、低用量群で平均14.8 mmHg、対照群で平均15.7 mmHgに低下していた。薬剤放出型人工水晶体を用いた2群と対照群との間で眼圧の低下量に統計学的な有意差は認められなかった。また、薬剤放出型人工水晶体を挿入された患者の95%超が、ほかの緑内障治療薬を必要としなかった。安全性に関しては3群間で大きな違いは認められず、重篤な有害事象も報告されなかった。Kammer氏は、「今回の12カ月時点の中間結果が、初めてヒトを対象に実施した試験の結果とこれほどよく一致したことには、驚きよりも心強さを感じた。異なる試験で同様の結果が得られたことは、開発が進む中で治療効果が再現されていることを裏付ける安心材料となる」と述べている。今回の試験に参加した患者は、3年間にわたり追跡調査される予定だ。また、現在、より規模の大きな2件の第3相臨床試験も進められている。Kammer氏は、「眼圧を下げる効果がどのくらい持続するのか、また安全性に問題がないかを把握するためには、さらに長期の追跡調査が重要になる。緑内障の治療は、患者が病気をより簡単に管理できる方法へと向かっている」と期待を示している。なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。(HealthDay News 2026年10月13日) https://www.healthday.com/health-news/eye-care/experimental-cataract-lens-can-treat-glaucoma-through-time-release-drugs Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock