診察室では血圧が正常でも自宅では高くなる「仮面高血圧」の高齢者は、転倒のリスクが高い可能性があるようだ。78~98歳の高齢者を対象にした研究で、仮面高血圧の人は、診察室と自宅の両方で血圧が高い「持続性高血圧」の人と比べて、転倒リスクが70%高いことが示された。米ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのFrances Wang氏らによるこの研究結果は、米国心臓協会(AHA)の高血圧科学セッション2026(Hypertension 2026、10月7~11日、米アーリントン)で発表された。Wang氏は、「今回の研究結果は、高齢者の隠れた高血圧や転倒リスクを見つける上で、診察室での血圧測定に加えて、家庭での血圧測定も重要な手段となり得ることを示している」と述べている。65歳以上の人では、転倒は身体障害や機能低下の主要な原因である。通常、低血圧は転倒のリスク因子と見なされているが、近年、家庭血圧が高いことが転倒リスクの上昇と関連することを示唆するエビデンスが蓄積されつつある。今回の研究では、地域住民を対象に動脈硬化リスクを長期にわたって調べる研究(ARIC研究)に参加した、78~98歳の高齢者758人(年齢中央値83歳、女性59%)のデータが解析された。対象者の82%はすでに降圧薬を使用していた。血圧は、診察室では、座位での5分間の休息後に1分間隔で3回測定し、家庭では、連続しない8日間にわたり、朝と夜に測定した。さらに対象者は、年1回の電話調査で過去12カ月間の転倒回数を自己申告した。対象者のうち、17.0%が診察室でのみ血圧が高くなる白衣高血圧、15.4%が仮面高血圧、34.5%は持続性高血圧、33.2%は診察室と自宅の両方で血圧が正常だった。追跡期間の中央値は350日で、追跡調査時に対象者の約4人に1人(23.4%)が、過去12カ月間に少なくとも1回転倒したと自己申告した。解析の結果、持続性高血圧の人と比較して、仮面高血圧の人では転倒リスクが70%高かった。一方白衣高血圧の人では、持続性高血圧の人と比べて転倒リスクが低いことが示された。Wang氏は、「家庭での血圧測定は、高齢者の健康状態を把握する上で有用な情報をもたらす。また、過去の研究では、高齢者に限らず、一般の人々の大半にとっても有用であることが示されている」と説明。その上で、「高齢者本人だけでなく、その家族や介護者にも、家庭で定期的に血圧を測定し、その記録を医療チームと共有してほしい。そうすることで、血圧管理や健康管理全般に関する方針を決める際に、役立てることができるだろう」と述べている。AHAのボランティア専門家であり、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)デービッド・ゲフィン医学部のKarol Watson氏も、「今回の研究結果は、診察室での血圧が正常だからといって、それだけで安心できるわけではないことを裏付けている」と指摘する。同氏は、「今回の研究では、仮面高血圧の高齢者で転倒リスクが高かった理由は明らかになっていない。ただ、血圧の変動や、高齢者が1日を通して血圧をどの程度うまく調節できているかが関係している可能性がある。特に高血圧のある高齢者では、転倒リスクを減らすことを日常的な健康管理の一環として考えるべきだ」と付け加えている。なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。(HealthDay News 2026年10月12日) https://www.healthday.com/health-news/cardiovascular-diseases/masked-high-blood-pressure-poses-a-fall-risk-for-seniors-study-warns Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock