慢性的な神経障害性疼痛または筋骨格系疼痛を有する脊髄損傷患者では、個別に処方された運動プログラムに6カ月間取り組むことで、疼痛の強度が軽減する可能性が示唆された。ブリティッシュコロンビア大学(カナダ)予防医学講座のKathleen Martin Ginis氏らによるこの研究結果は、「Archives of Physical Medicine and Rehabilitation」10月号に掲載された。研究グループによると、脊髄損傷患者の多くが慢性疼痛を抱えており、疼痛が脊髄損傷そのものよりも大きな苦痛となることもあるという。Martin Ginis氏は、「脊髄損傷患者からは、疼痛を管理するために運動を取り入れているという話を何年も前から聞いていた。しかし、われわれには、運動をどのように処方すべきかについて、確かなエビデンスがなかった」と話している。今回の研究では、脊髄損傷者向けの運動ガイドラインで推奨される運動量を日常的には満たしていない、慢性疼痛のある脊髄損傷患者46人(男性76%、平均年齢50.6歳)を対象にランダム化比較試験を実施し、運動プログラムにより慢性疼痛が軽減するのかを検討した。参加者のうち、25人は個別に設定された有酸素運動と筋力トレーニングから成るプログラムを行う群(運動群)、残る21人は通常の活動を継続する群(対照群)にランダムに割り付けられた。運動群には、認定フィットネストレーナーによる支援や週1回の運動カウンセリングも提供された。運動プログラムは、2017年に発表された脊髄損傷のある成人のための科学的運動ガイドラインに基づいている。同ガイドラインでは、中強度から高強度の有酸素運動を1回20分以上、週2回行うことに加え、機能が保たれている主要な筋群を対象とした中強度から高強度の筋力トレーニングを、1回3セット、週2回行うことが推奨されている。その結果、主要評価項目であるSF-36疼痛スコアについては、6カ月時点で運動群と対照群の間に統計学的に有意な差は認められなかった。副次評価項目として、International SCI Pain Basic Dataset version 2.0(ISCIPBDS)を用いて疼痛の強度および疼痛による日常生活への支障を評価したところ、3カ月時点および6カ月時点のいずれにおいても、運動群では対照群に比べて疼痛強度が統計学的に有意に低下していた。疼痛強度が30%超軽減した人の割合は、運動群では3カ月時点で19人中9人、6カ月時点で18人中8人であったのに対し、対照群では3カ月時点、6カ月時点ともに16人中2人であった。また、運動群では、3カ月時点で疼痛による日常生活の活動や気分への支障も、対照群に比べて有意に軽減していた。ただし、これらの項目については6カ月時点では統計学的に有意な差は認められなかった。研究グループは、今回の臨床試験が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックに伴う制限や山火事による避難のために繰り返し中断され、当初予定していた人数の参加者を集めることができなかった点を限界として挙げている。Martin Ginis氏は、「運動は万能な治療法ではない。また、今回の結果を検証する、より大規模な臨床試験が必要だ。それでも本研究により、標準化された運動プログラムを実際の生活環境で実施できること、また、一部の患者にとっては運動プログラムが薬を使わない治療の選択肢となる可能性があることが示された」とニュースリリースの中で述べている。(HealthDay News 2026年10月20日) https://www.healthday.com/health-news/neurology/exercise-reduces-chronic-pain-among-spinal-cord-patients-trial-finds Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock