広島大学大学院分子細胞情報学の浅田梨絵氏と教授の今泉和則氏らは、マウスを用いた検討で、脂肪の燃焼を促す褐色脂肪細胞の働きを活発にする、新しい細胞内の情報伝達経路を発見したと報告した。肥満治療法の開発に新たな道が開かれたものと期待される。詳細は「Scientific Reports」11月16日オンライン版に掲載された。 褐色脂肪細胞は、ヒトでは肩甲骨の間や腋窩、首や心臓、腎臓の周囲など限定された部位に存在し、脂肪を分解して熱を産生する働きをもつ。褐色脂肪細胞の働きが悪いと、体内で余分な脂肪が蓄積されやすくなり、肥満につながると考えられており、褐色脂肪細胞は近年、肥満の予防・治療研究のターゲットとして注目を集めている。. 褐色脂肪細胞にはミトコンドリアが多く存在し、脱共役蛋白質であるUCP-1によって熱を産生する機構がある。浅田氏らは、マウスの細胞を用いてUCP-1の増加を促す細胞内の情報伝達経路を探索したところ、これまでわかっているATF2、PGC1α蛋白質が介在する経路に加えて、IRE1α、XBP1蛋白質を介した、小胞体を経由する新しい経路を見いだした。. 同氏らの検討によると、マウス細胞内でIRE1α-XBP1経路を遮断したところ、UCP-1の増加が抑制されたが、小胞体ストレスでIRE1α-XBP1経路を活性化させてもUCP-1の増加はみられなかった。しかし、プロテインキナーゼA(PKA)を活性化させると、IRE1α-XBP1経路の活性化につながり、UCP-1が増加した。このことから、UCP-1の増加を引き起こすには、PKAに依存したIRE1α-XBP1経路の活性化が重要であることがわかったという。. 浅田氏は、HealthDayの取材に応じ、「今回の知見から、人工的な褐色脂肪細胞の活性化を試みるうえで新しい視点を提供できた」とその意義を説明。また、今後の展望について、「肥満治療につなげるには、まず、今回明らかになった経路がヒトでも重要であるかを確認するとともに、IRE1αやXBP1の活性を調節できる化合物を探索し、投与することで肥満解消効果が得られるのか生体レベルで検証する必要がある。多くの課題が山積しているが、1つずつクリアして肥満治療へとつなげていきたい」と話している。(HealthDay News 2015年11月27日). Copyright (c) 2015 HealthDay. All rights reserved.
広島大学大学院分子細胞情報学の浅田梨絵氏と教授の今泉和則氏らは、マウスを用いた検討で、脂肪の燃焼を促す褐色脂肪細胞の働きを活発にする、新しい細胞内の情報伝達経路を発見したと報告した。肥満治療法の開発に新たな道が開かれたものと期待される。詳細は「Scientific Reports」11月16日オンライン版に掲載された。 褐色脂肪細胞は、ヒトでは肩甲骨の間や腋窩、首や心臓、腎臓の周囲など限定された部位に存在し、脂肪を分解して熱を産生する働きをもつ。褐色脂肪細胞の働きが悪いと、体内で余分な脂肪が蓄積されやすくなり、肥満につながると考えられており、褐色脂肪細胞は近年、肥満の予防・治療研究のターゲットとして注目を集めている。. 褐色脂肪細胞にはミトコンドリアが多く存在し、脱共役蛋白質であるUCP-1によって熱を産生する機構がある。浅田氏らは、マウスの細胞を用いてUCP-1の増加を促す細胞内の情報伝達経路を探索したところ、これまでわかっているATF2、PGC1α蛋白質が介在する経路に加えて、IRE1α、XBP1蛋白質を介した、小胞体を経由する新しい経路を見いだした。. 同氏らの検討によると、マウス細胞内でIRE1α-XBP1経路を遮断したところ、UCP-1の増加が抑制されたが、小胞体ストレスでIRE1α-XBP1経路を活性化させてもUCP-1の増加はみられなかった。しかし、プロテインキナーゼA(PKA)を活性化させると、IRE1α-XBP1経路の活性化につながり、UCP-1が増加した。このことから、UCP-1の増加を引き起こすには、PKAに依存したIRE1α-XBP1経路の活性化が重要であることがわかったという。. 浅田氏は、HealthDayの取材に応じ、「今回の知見から、人工的な褐色脂肪細胞の活性化を試みるうえで新しい視点を提供できた」とその意義を説明。また、今後の展望について、「肥満治療につなげるには、まず、今回明らかになった経路がヒトでも重要であるかを確認するとともに、IRE1αやXBP1の活性を調節できる化合物を探索し、投与することで肥満解消効果が得られるのか生体レベルで検証する必要がある。多くの課題が山積しているが、1つずつクリアして肥満治療へとつなげていきたい」と話している。(HealthDay News 2015年11月27日). Copyright (c) 2015 HealthDay. All rights reserved.