過食や運動不足などの生活習慣が大きく関与する2型糖尿病の予防・治療には、薬物療法や食事療法と並んで「運動療法」が有効な手段となるが、実際には運動療法の指導頻度は食事療法に比べて低く、これらの指導状況には大きな「較差」が存在することを、愛知みずほ大学学長・大学院人間科学研究科の佐藤祐造氏が、第59回日本糖尿病学会年次学術集会(5月19~21日、京都市)で報告した。同氏は、運動療法へのコメディカルの参画を促し、専門指導者を育成していくことが、運動療法普及の鍵になると強調した。同氏が委員長を務めた同学会の「糖尿病運動療法・運動処方確立のための学術調査委員会」と日本医師会が共同で行った調査によると、糖尿病専門医・一般内科医(各600人が参加)の7~8割が、食事療法に関しては「ほぼ全員の初診患者に指導している」と回答したのに対し、運動療法では4割程度にとどまっていた。運動療法指導を阻む要因には、「指導に十分な時間がとれない」、「診療報酬に反映しない」のほか、「指導者がいない」ことが重要な阻害因子であることが判明した。.また、同委員会が2型糖尿病患者5,100人を対象に行った調査によると、医師を対象とした調査と同様に、運動療法の指導頻度は食事療法に比べて低く、運動療法では指導を「受けたことがない」とする回答が3割に上った(食事療法は1割)。医師から運動療法指導を受けている患者が約65%と、コメディカルの参画は少なく、ここでも食事療法との「較差」が浮き彫りにされた。.同調査によると、運動療法を行っている患者は約半数だったが、運動療法のほか、日常的に身体活動量が多いほど良好な血糖コントロールが得られることもわかった。では、運動療法を継続するには何が必要なのか。同氏は「これらの調査結果を踏まえ、運動を行う『時間』が最大の要因であるとし、指導時には、日常生活に運動をうまく取り入れる、短時間でも有効な運動を積み重ねるなどの工夫が必要である」と述べた。.最近では、座位時間が長いと2型糖尿病や耐糖能異常リスクが高まるとの研究報告が国内外で相次いでいる。米国糖尿病学会(ADA)は2016年、2型糖尿病リスクを低減させるため、座位時間を減らすよう勧告を行っている。同氏は、2型糖尿病の予防・治療における運動療法の重要性を改めて強調し、「この重要性を医療者・患者双方に周知徹底させるとともに、診療報酬加算や専門指導者の育成、運動療法のガイドライン策定や研究の推進など、医療者側の整備を進めていく必要がある」と強く訴えた。(HealthDay News 2016年5月30日).Copyright (c) 2016 HealthDay. All rights reserved.
過食や運動不足などの生活習慣が大きく関与する2型糖尿病の予防・治療には、薬物療法や食事療法と並んで「運動療法」が有効な手段となるが、実際には運動療法の指導頻度は食事療法に比べて低く、これらの指導状況には大きな「較差」が存在することを、愛知みずほ大学学長・大学院人間科学研究科の佐藤祐造氏が、第59回日本糖尿病学会年次学術集会(5月19~21日、京都市)で報告した。同氏は、運動療法へのコメディカルの参画を促し、専門指導者を育成していくことが、運動療法普及の鍵になると強調した。同氏が委員長を務めた同学会の「糖尿病運動療法・運動処方確立のための学術調査委員会」と日本医師会が共同で行った調査によると、糖尿病専門医・一般内科医(各600人が参加)の7~8割が、食事療法に関しては「ほぼ全員の初診患者に指導している」と回答したのに対し、運動療法では4割程度にとどまっていた。運動療法指導を阻む要因には、「指導に十分な時間がとれない」、「診療報酬に反映しない」のほか、「指導者がいない」ことが重要な阻害因子であることが判明した。.また、同委員会が2型糖尿病患者5,100人を対象に行った調査によると、医師を対象とした調査と同様に、運動療法の指導頻度は食事療法に比べて低く、運動療法では指導を「受けたことがない」とする回答が3割に上った(食事療法は1割)。医師から運動療法指導を受けている患者が約65%と、コメディカルの参画は少なく、ここでも食事療法との「較差」が浮き彫りにされた。.同調査によると、運動療法を行っている患者は約半数だったが、運動療法のほか、日常的に身体活動量が多いほど良好な血糖コントロールが得られることもわかった。では、運動療法を継続するには何が必要なのか。同氏は「これらの調査結果を踏まえ、運動を行う『時間』が最大の要因であるとし、指導時には、日常生活に運動をうまく取り入れる、短時間でも有効な運動を積み重ねるなどの工夫が必要である」と述べた。.最近では、座位時間が長いと2型糖尿病や耐糖能異常リスクが高まるとの研究報告が国内外で相次いでいる。米国糖尿病学会(ADA)は2016年、2型糖尿病リスクを低減させるため、座位時間を減らすよう勧告を行っている。同氏は、2型糖尿病の予防・治療における運動療法の重要性を改めて強調し、「この重要性を医療者・患者双方に周知徹底させるとともに、診療報酬加算や専門指導者の育成、運動療法のガイドライン策定や研究の推進など、医療者側の整備を進めていく必要がある」と強く訴えた。(HealthDay News 2016年5月30日).Copyright (c) 2016 HealthDay. All rights reserved.