これまでの疫学研究には、女性の身体活動量は男性よりも少ないとする報告が多い。しかし今回、それと相反する研究結果が発表された。北海道寿都町で実施された住民対象横断研究「DOSANCO健康調査」のデータを、東京医科大学公衆衛生学分野の天笠志保氏らが解析したもので、「Journal of Epidemiology」8月8日オンライン版に論文が掲載された。健康の維持・改善には従来、中~高強度の身体活動を一定時間、動作を中断せずに連続して行うことが重要とされ、女性はその条件を満たす身体活動が男性よりも少ないと考えられてきた。その一方で近年、短時間の軽強度身体活動の積み重ねであっても有効であるとのエビデンスが蓄積されつつある。しかし、一般住民における軽強度の身体活動の性差は明らかになっていなかった。.天笠氏らが解析に用いたDOSANCO健康調査は、2015年に寿都町の3歳以上の全住民(特別養護老人ホームの居住者を除く)2,638人を対象に実施され、2,100人がアンケート調査に協力した。そのうちの771人は、加速度計を用いた身体活動量調査にも協力。参加者には連続14日間、就寝時以外は入浴、水泳などの水中での活動を除いて、常に加速度計を身につけて生活してもらった。.身体活動レベルは、1.5METs以下を座位、1.6~2.9METsを軽強度の身体活動、3.0METs以上を中~高強度の身体活動と判定し、また、中~高強度の身体活動については持続時間が10分以上と未満とを分けて評価した。加速度計の装着時間が1日当たり10時間に満たなかった人、および小児を除外し、最終的に634人(平均年齢57.9±16.9歳、男性43.8%)を今回の解析対象とした。.対象者の加速度計装着時間は平均873.4±91.6分/日だった。身体活動レベル別に見ると、座位が464.5±114.5分/日、軽強度の身体活動が361.5±96.2分/日、中~高強度の身体活動が47.1±30.6分/日であり、中~高強度身体活動の持続時間は、多くが10分未満だった(男性85.1%、女性87.3%)。.男性と女性を比較すると、女性は有職者率が低く有意差があったが(男性73.6%、女性55.5%。P=0.001)、身体活動ガイドラインの推奨(10分以上継続して行う中~高強度の身体活動を週150分以上)の順守者率(男性10.8%、女性9.9%)や歩数(男性4,899歩/日、女性4,580歩/日)に関しては、有意な性差はなかった。.続いて総身体活動量を性別に見ると、男性14.0METs・時間/日、女性16.1METs・時間/日であり、女性の方が有意に身体活動量が多いという結果が得られた(P<0.001)。身体活動レベルごとに分けて解析した結果、この差は中~高強度身体活動の時間ではなく、座位時間と軽強度身体活動を行っている時間の差によって生じていることが明らかになった。.具体的には、女性の座位時間は男性に比較し13.3%(95%信頼区間9.9~15.9)有意に少ない一方で、軽強度の身体活動時間は19.8%(同14.9~24.6)有意に多かった。それに対して、中~高強度の身体活動時間の性差は有意でなかった。この関係は、65歳未満と以上で層別化して解析しても同様に認められ、高齢者もやはり女性は男性より軽強度身体活動時間が長く、総身体活動量が多かった。.これらの結果のまとめとして著者らは、「軽強度の身体活動を含めて評価した場合、既報とは対照的に、日本人女性は男性よりも活動的であることが示唆される。従来のように、身体活動量を中~高強度の身体活動のみで評価すると、女性の身体活動量を過小評価し、軽強度の身体活動による健康へのメリットを見落とす可能性がある」と述べている。(HealthDay News 2020年9月7日).Abstract/Full Texthttps://www.jstage.jst.go.jp/article/jea/advpub/0/advpub_JE20200185/_article.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.
これまでの疫学研究には、女性の身体活動量は男性よりも少ないとする報告が多い。しかし今回、それと相反する研究結果が発表された。北海道寿都町で実施された住民対象横断研究「DOSANCO健康調査」のデータを、東京医科大学公衆衛生学分野の天笠志保氏らが解析したもので、「Journal of Epidemiology」8月8日オンライン版に論文が掲載された。健康の維持・改善には従来、中~高強度の身体活動を一定時間、動作を中断せずに連続して行うことが重要とされ、女性はその条件を満たす身体活動が男性よりも少ないと考えられてきた。その一方で近年、短時間の軽強度身体活動の積み重ねであっても有効であるとのエビデンスが蓄積されつつある。しかし、一般住民における軽強度の身体活動の性差は明らかになっていなかった。.天笠氏らが解析に用いたDOSANCO健康調査は、2015年に寿都町の3歳以上の全住民(特別養護老人ホームの居住者を除く)2,638人を対象に実施され、2,100人がアンケート調査に協力した。そのうちの771人は、加速度計を用いた身体活動量調査にも協力。参加者には連続14日間、就寝時以外は入浴、水泳などの水中での活動を除いて、常に加速度計を身につけて生活してもらった。.身体活動レベルは、1.5METs以下を座位、1.6~2.9METsを軽強度の身体活動、3.0METs以上を中~高強度の身体活動と判定し、また、中~高強度の身体活動については持続時間が10分以上と未満とを分けて評価した。加速度計の装着時間が1日当たり10時間に満たなかった人、および小児を除外し、最終的に634人(平均年齢57.9±16.9歳、男性43.8%)を今回の解析対象とした。.対象者の加速度計装着時間は平均873.4±91.6分/日だった。身体活動レベル別に見ると、座位が464.5±114.5分/日、軽強度の身体活動が361.5±96.2分/日、中~高強度の身体活動が47.1±30.6分/日であり、中~高強度身体活動の持続時間は、多くが10分未満だった(男性85.1%、女性87.3%)。.男性と女性を比較すると、女性は有職者率が低く有意差があったが(男性73.6%、女性55.5%。P=0.001)、身体活動ガイドラインの推奨(10分以上継続して行う中~高強度の身体活動を週150分以上)の順守者率(男性10.8%、女性9.9%)や歩数(男性4,899歩/日、女性4,580歩/日)に関しては、有意な性差はなかった。.続いて総身体活動量を性別に見ると、男性14.0METs・時間/日、女性16.1METs・時間/日であり、女性の方が有意に身体活動量が多いという結果が得られた(P<0.001)。身体活動レベルごとに分けて解析した結果、この差は中~高強度身体活動の時間ではなく、座位時間と軽強度身体活動を行っている時間の差によって生じていることが明らかになった。.具体的には、女性の座位時間は男性に比較し13.3%(95%信頼区間9.9~15.9)有意に少ない一方で、軽強度の身体活動時間は19.8%(同14.9~24.6)有意に多かった。それに対して、中~高強度の身体活動時間の性差は有意でなかった。この関係は、65歳未満と以上で層別化して解析しても同様に認められ、高齢者もやはり女性は男性より軽強度身体活動時間が長く、総身体活動量が多かった。.これらの結果のまとめとして著者らは、「軽強度の身体活動を含めて評価した場合、既報とは対照的に、日本人女性は男性よりも活動的であることが示唆される。従来のように、身体活動量を中~高強度の身体活動のみで評価すると、女性の身体活動量を過小評価し、軽強度の身体活動による健康へのメリットを見落とす可能性がある」と述べている。(HealthDay News 2020年9月7日).Abstract/Full Texthttps://www.jstage.jst.go.jp/article/jea/advpub/0/advpub_JE20200185/_article.Copyright © 2020 HealthDay. All rights reserved.