前糖尿病や早期2型糖尿病では、血糖コントロールのために運動習慣を身につけることが重要とされている。しかし現実には、運動を「始める」よりも「続ける」ことのほうが難しい。こうした課題に対し、オンライン上で仲間とつながり、互いに励ましあいながら目標行動の維持を支えるデジタルピアサポートに注目した研究が行われた。前糖尿病および早期2型糖尿病を対象とした本研究では、アプリを用いた介入によって、日々の歩数目標の達成率および平均歩数が高まることが示された。研究は、北里大学大学院医療研究科の吉原翔太氏らによるもので、詳細は12月15日付で「JMIR Formative Research」に掲載された。 2型糖尿病は世界的な公衆衛生課題であり、運動不足などの生活習慣が発症に関与している。運動療法の中でも歩行は、日常生活に取り入れやすく、運動に伴うリスクが小さいとされ、前糖尿病や2型糖尿病において血糖改善と関連することが報告されている。一方で、前糖尿病や2型糖尿病患者の運動習慣を支援する対面型ピアサポートは、人的・時間的資源を要するため、広く継続的に提供することが難しい。そこで本研究は、前糖尿病および早期2型糖尿病を有する者を対象に、オンライン上で仲間とつながりながら相互に支援し合うデジタルピアサポートアプリが、歩数目標達成率および平均歩数に与える影響を検証した。 本研究は、「神奈川ME-BYOリビングラボ」プログラムの一環として、2019年10~12月に実施された前向きの非ランダム化比較試験である。参加者は、神奈川県在住または県内企業に勤務する40~79歳の成人38人で、HbA1c値が5.6~7.0%の前糖尿病または早期2型糖尿病に該当する者とした。参加者は、デジタルピアサポートアプリ(「みんチャレ」、A10Lab Inc.)群と対照群に分けられた。デジタルピアサポートアプリ群では、日々の歩数をアプリで記録し、その進捗を少人数(最大5人)のピアグループ内で共有するとともに、リアルタイムのフィードバックや支援を受けた。対照群では、万歩計を用いて各自が個別に歩数を記録した。主要評価項目は、3ヵ月間における1日平均歩数目標の達成率とした。副次評価項目として、期間中の1日平均歩数、BMI、HbA1c、血圧、および自己申告による生活習慣を評価した。 本研究を完遂した参加者は計32人であり、内訳はデジタルピアサポートアプリ群18人、対照群14人であった。参加者のベースライン特性は2群間で有意な差は認められなかった。 デジタルピアサポートアプリ群では、対照群と比較して、1日歩数目標の達成率の中央値が有意に高く(57.2%〔四分位範囲:32.2~90%〕 vs 26.7%〔10~64.4%〕、P=0.04)、1日歩数の中央値も有意に多かった(6854歩〔4846~10,388歩〕 vs 3946歩〔3176~6832歩〕、P=0.03)。線形混合効果モデルによる解析では、歩数の経時的変化は群間で異なり、デジタルピアサポートアプリ群では時間経過に伴う有意な低下は認められなかった一方、対照群では時間とともに有意に減少した(P<0.001)。 一方、HbA1c値、血圧、生活習慣行動の変化については、両群間で有意差は認められなかったが、BMIの介入前後の変化については、デジタルピアサポートアプリ群のみで改善傾向がみられた(P=0.07)。 著者らは、「前糖尿病および早期2型糖尿病を対象に、デジタルピアサポートアプリは歩数目標達成率と平均歩数を維持し、歩数の低下抑制に寄与した可能性がある。リアルタイムのフィードバックや仲間からの承認が動機づけに関与した可能性があり血糖改善は短期間では限定的だったが、行動変容を促す有効な手段と示唆された」と述べている。 なお今後の研究課題として、デジタルピアサポートが行動変容の「きっかけ」として機能するのか、あるいは継続利用によって運動習慣そのものを支える仕組みとなるのかについて、さらなる検証が必要とされている。(HealthDay News 2026年1月26日) Abstract/Full Texthttps://formative.jmir.org/2025/1/e75953/ Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock