がん治療の進歩により、生存期間が延びる患者が増える一方で、治療後に心血管疾患(CVD)を発症するリスクが新たな課題として注目されている。しかし、どのような患者がCVDを発症しやすいのかは、十分に明らかになっていない。今回、大阪府の大規模がん登録データを用いた解析で、がんの初回診断時に糖尿病を併存する患者では、CVDの新規発症および全死亡リスクが有意に高いことが示された。研究は、大阪国際がんセンターがん対策センターの桒原佳宏氏、宮代勲氏らによるもので、詳細は1月22日付で「PLOS One」に掲載された。がん治療の進歩により生存期間が延び、がんサバイバーが増加する一方、がんとCVDは共通の危険因子を多く持ち、治療自体もCVDリスクを高めることから、治療後のCVD発症が重要な課題となっている。しかし、がん患者においてCVD発症に影響する因子は十分に明らかではない。糖尿病は一般集団でCVDリスクを高めることが知られているが、がんの初回診断時にCVDを有さない患者における影響は不明である。欧州心臓病学会(ESC)が策定した心臓とがん医療に関するガイドラインでは、がん患者の糖尿病管理の重要性が示されているが、十分なエビデンスはそろっていない。本研究は、糖尿病併存がCVD発症および死亡に与える影響を明らかにすることを目的とした。本研究は多施設の後ろ向きコホート研究であり、大阪府がん登録をDPCデータと連結した集団ベースのデータを用いた。2010~2015年にがんと診断され、初回診断時にCVDのない患者を対象とした。糖尿病の有無は糖尿病治療薬の処方歴から判定し、CVD発症はICD-10コードで同定した。がん診断後3年間追跡し、がん診断時の糖尿病併存の有無と全死亡およびCVD発症との関連を、年齢、性別、がん種、病期、BMIなどで調整したCox比例モデルおよび競合リスク解析で評価した。本研究の解析対象12万1,997人のうち、4,317人は、がんの初回診断時に糖尿病を併存していた。糖尿病を併存する群は、併存しない群と比較して男性の割合が高く、比較的高齢の患者が多かった。また、遠隔転移を有する患者の割合も高かった。糖尿病を併存する群の3年生存率は61.5%で、併存しない群の78.2%を下回っていた。交絡因子を調整したCox比例ハザードモデルの結果、糖尿病を併存する群では、併存しない群と比較して全死亡リスクが有意に高く(調整ハザード比1.40〔95%信頼区間1.33~1.48〕)、予後不良との関連が示された。がん部位別解析では、糖尿病の併存は一部のがん種を除き、ほとんどのがん部位で予後不良と関連していた。がん診断後に糖尿病と診断された患者を除外した感度解析でも、結果は一貫していた。死亡を競合リスクとして考慮した競合リスク回帰分析では、糖尿病を併存する患者は、併存しない患者と比較して全CVDの発症リスクが有意に高かった(同1.43〔1.34~1.53〕)。また、心血管イベントの種類やがん種によって関連の強さには差がみられたが、がん種別解析でも全体解析と同様の傾向が認められた。なお、がん診断後に糖尿病と診断された患者を除外して解析しても、主要な結果は変わらなかった。死亡直前2か月以内に入院歴のあった2万1,292人を対象に死因を推定した解析では、糖尿病を併存する群でCVDによる死亡割合が高かった(6.94% vs. 4.57%)。交絡因子を調整したロジスティック回帰分析でも、糖尿病の併存はCVDによる死亡リスクの上昇と有意に関連していた(オッズ比1.47〔95%信頼区間1.19~1.81〕)。がん種別では、胃がんおよび胆嚢がんでこの関連が有意であった。著者らは、「がん診断時に心血管疾患のない患者でも、糖尿病を併存している場合、その後の心血管疾患の発症や予後に悪影響を及ぼす可能性が示された。糖尿病管理ががん患者の転帰改善につながるかどうか、今後の検証が必要である」と述べている。なお、本研究の限界として、診療報酬データに基づく後ろ向き観察研究である点、糖尿病やCVDの誤分類や未調整の交絡因子の影響を否定できない点などを挙げている。(HealthDay News 2026年2月24日) Abstract/Full Texthttps://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0337946 Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock