日本では地域によって医療資源や人口構成が異なり、健康アウトカムの差が指摘されている。今回、こうした地域特性を定量的に評価する指標「へき地度(Rurality Index for Japan:RIJ)」を用いた全国規模の研究で、RIJが高い地域ほど脳血管疾患の死亡率や男性の自死率が高い傾向が示された。研究は、横浜市立大学大学院データサイエンス研究科ヘルスデータサイエンス専攻の金子惇氏、山形大学大学院医学系研究科医療政策学講座の池田登顕氏によるもので、詳細は1月26日付で「BMJ Open」に掲載された。 世界的に都市と地方では健康状態や医療アクセスの格差が報告されているが、日本では「へき地性(rurality)」の定義や評価方法が研究ごとに異なり、統一指標による検討は十分に行われていなかった。離島や過疎地域、無医地区など医療アクセスに課題を抱える地域も存在する中、客観的な指標を用いた全国的評価の必要性が指摘されてきた。そこで本研究は、日本の医療におけるへき地尺度(RIJ)を用い、主要5疾患における地域差を評価するとともに、へき地性と高齢化率や社会経済状況との関連を検討した。 研究は、生態学的研究デザインを用い、日本の自治体および政令指定都市の行政区を対象に実施された。人口が0人の地域を除く1,897自治体・行政区、総人口約1億2,600万人を解析対象とした。地域のへき地度はRIJを用いて評価し、RIJスコアは分布に基づいて四分位(Q1〜Q4)に分類した。急性心筋梗塞(AMI)、脳血管疾患(脳卒中・脳出血)、がん、自死について標準化死亡比(SMR)を算出し、死亡データが利用できない糖尿病については外来診療の標準化受療比(SCR)を代替指標として用いた。 解析対象となった1,897の自治体・行政区の解析から、RIJが高い地域ほど、脳血管疾患および男性自死のSMRが高いことが示された。いずれもRIJの上昇に伴い段階的に増加する傾向(用量反応関係)が認められた。 男性の脳卒中・脳出血のSMRは、最もRIJが低い地域(Q1)を基準とすると、RIJのSMRに対する回帰係数がQ2で11.5、Q3で12.7、Q4で18.4と増加し、女性でも同様の傾向がみられた。また男性の自死のSMRでも同様に、Q2で8.7、Q3で12.9、Q4で14.1と、RIJが高いほど回帰係数が上昇した。 AMIでは、RIJが高い地域でSMRが高い傾向がみられたが、明確な段階的増加は確認されなかった。一方、がん死亡率および糖尿病外来受療のSCRについては、RIJとの有意な関連は認められなかった。 さらに、RIJは地域の高齢化率および地理的剥奪指標(ADI)と正の相関を示し、RIJが高いほど高齢者割合や社会経済的困難を抱える傾向が示された(Spearmanの相関係数はそれぞれ0.67、0.55)。これらの結果は、へき地度の高い地域では医療アクセスや社会的支援の面で課題が集中していることを示唆している。 著者らは、「これらの結果は、救急医療へのアクセス改善およびメンタルヘルス支援の強化を含む、へき地度の高い地域に焦点を当てた医療政策の重要性を示している」と述べている。 なお、本研究では自治体単位の解析で個人レベルの因果関係は示せない点や、人口2000人未満の地域が含まれておらず、最もへき地度の高い地域における格差を過小評価した可能性がある点などが限界として挙げられる。またSCRは受療行動や患者移動の影響を受けるため、医療ニーズを直接反映していない可能性もある。 地域差を単なる都市・地方の二分法ではなく、連続的な「へき地度」として捉えた点は、今後の地域医療政策や研究のあり方にも示唆を与える結果といえそうだ。(HealthDay News 2026年3月2日) Abstract/Full Texthttps://bmjopen.bmj.com/content/16/1/e103227 Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock