高齢者のフレイルは身体機能だけでなく、認知、社会、口腔など多面的な側面を持つことが知られている。今回、地域在住高齢者を対象とした研究で、意欲低下(アパシー)と抑うつ症状はいずれも身体・認知・社会フレイルと関連し、両者を併存する場合には口腔を含む多面的フレイルとの関連が示唆された。研究は、島根大学医学部内科学講座内科学第三の黒田陽子氏、同大学地域包括ケア教育研究センター(CoHRE)の安部孝文氏らによるもので、詳細は2月6日付で「Geriatrics & Gerontology International」に掲載された。 日本の超高齢社会では健康寿命の延伸が重要課題であり、フレイルは加齢に伴う生理的予備能の低下によりストレスへの抵抗力が弱まった状態で、要介護や転倒、入院、死亡などと関連することが知られている。日本では多面的評価を可能とする「後期高齢者の質問票(Questionnaire for Medical Checkup of the Old-Old:QMCOO)」が導入されたが、各フレイル領域との関連、とくに情動機能との関係は十分に検討されていない。抑うつはフレイルとの関連が報告されている一方、アパシーとフレイルの関連や両者の違いは不明な点が多い。本研究は、地域在住高齢者を対象に、アパシーと抑うつ症状を独立して評価し、身体・口腔・認知・社会の各フレイル領域との関連を明らかにすることを目的とした。 本研究は、2024年のShimane CoHRE Studyに参加した島根県雲南市在住の75歳以上の高齢者465人を対象とした横断研究として実施された。アパシーは日本語版Starkstein Apathy Scale(やる気スコア)で16点以上、抑うつ症状はSelf-rating Depression Scaleで40点以上を基準に定義した。フレイルは、身体・認知・社会・口腔の各領域についてQMCOOを用いて評価した。解析では、年齢、性別、BMI、Multimorbidityで調整したロジスティック回帰分析を行った。 参加者の年齢中央値は78歳(四分位範囲76.0~82.0)、女性は約半数(49.7%)を占めた。参加者におけるアパシー、抑うつ症状、および両者の併存の有病割合は、それぞれ30.8%、29.9%、14.6%であった。二変量解析では、アパシー群は非アパシー群と比べて認知的フレイル(特に時間の見当識障害)や社会的フレイル(相談相手の不在など)の割合が高く、抑うつ症状群では身体機能低下を中心とした身体的フレイルとの関連が目立った。 多変量解析では、アパシーおよび抑うつ症状はいずれも身体的フレイル、運動習慣の欠如、認知的フレイル、記憶障害、社会的交流の不足と独立して関連していた。さらに、アパシーは時間の見当識障害、社会的フレイル、閉じこもり、相談相手の不在と関連し、抑うつ症状は咀嚼機能低下や身体機能低下との関連が特徴的であった。 また、アパシーと抑うつ症状の併存群では口腔・身体・認知・社会のすべてのフレイル領域と有意な関連が認められた。 著者らは、アパシーと抑うつ症状は共通して身体的・認知的フレイルと関連する一方、アパシーは特に社会的フレイルとの関連が示唆されたと結論づけている。また、「両者が併存する場合には口腔領域を含む複数のフレイル領域と関連し、多面的な脆弱性が強まる可能性がある。フレイル予防には情動機能の評価と個別化された対応が重要であり、因果関係の解明には今後の縦断研究が求められる」と述べている。 なお、本研究の限界として、横断研究デザインのため因果関係を検討できない点や自己報告によるバイアス、QMCOOのみでのフレイル評価、健診受診者に限定された集団による一般化可能性の制限などを挙げている。(HealthDay News 2026年3月9日) Abstract/Full Texthttps://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/ggi.70394 Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock