がん医療の進歩により、がんサバイバーは増加しているが、その後の生活機能や自立の維持は重要な課題となっている。今回、日本の大規模データを用いた研究で、がんサバイバーにおける日常的な身体活動が、死亡だけでなく新規の要介護認定リスクとも関連する可能性が示された。研究は、国立循環器病研究センター予防医学・疫学情報部の中塚清将氏、国立長寿医療研究センター老年社会科学研究部の小野玲氏、九州大学大学院医学研究院の福田治久氏らによるもので、詳細は2月16日付で「BMJ Open」に掲載された。がんサバイバーに対する身体活動は、死亡や再発リスクの低下、QOL改善と関連することが報告され、ガイドラインでも推奨されている。しかし、複数のがん種を対象に、1年以上の習慣的身体活動と長期的な機能的アウトカムとの関連を大規模データで検討した研究は限られている。特に、要介護化のような社会的・制度的指標を用いた検討は十分ではない。そこで本研究は、日本の介護保険(LTCI)データを活用し、がんサバイバーにおける1年間の習慣的身体活動が死亡および要介護認定に与える影響を検証することを目的とした。本研究は、日本の13自治体が参加する大規模データベース「Longevity Improvement & Fair Evidence study(LIFE Study)」に登録された2014年4月から2022年3月までのレセプトおよび健診データを用いた後ろ向きコホート研究である。健康診断を受けた47万1,511人のうち、健診受診までの1年間にがんの診断があるなどの条件を満たした3万9,435人のがんサバイバーを解析対象とした。各参加者は最大約5年間追跡された。主要評価項目は、新規の要介護認定または全死亡の複合アウトカムとした。要介護認定は、自治体の担当職員が心身の状態を調査し、コンピュータ判定と専門職チームの審査を経て決定される制度上の指標で、日常生活動作(ADL)の低下を示す。全死亡はレセプトデータに基づいて把握した。身体活動は健診の項目より、「1回30分以上の軽く汗をかく運動を週2日以上、1年以上実施」と「日常生活において歩行または同等の身体活動を1日1時間以上実施」の、「はい・いいえ」の回答から運動とウォーキングの有無を把握した。解析では、年齢や生活習慣などの要因を調整した生存時間解析を行い、身体活動と死亡および要介護認定との関連を検討した。さらに、年齢層別や主要ながん種別の解析も実施した。身体活動は「運動とウォーキングの両方を行っている群」1万3,536人(34.3%)、「運動またはウォーキングのいずれかを行っている群」1万1,609人(29.4%)、「身体活動なし群」1万4,290人(36.2%)の3群に分類された。65~74歳のがんサバイバーでは、「身体活動なし群」は「運動とウォーキングの両方を行っている群」と比べ、全死亡または新規の要介護認定リスクが有意に高かった(調整後ハザード比〔HR〕1.72、95%信頼区間〔CI〕1.52~1.94)。75歳以上でも同様の傾向がみられ、「運動またはウォーキングのみ」の群(HR 1.51、95%CI 1.29~1.85)および「身体活動なし群」(HR 1.66、95%CI 1.43~1.92)は、いずれも「運動とウォーキングの両方を行っている群」と比べ、全死亡または要介護認定リスクが高かった。全死亡および要介護認定を個別に解析した補足解析でも、「身体活動なし群」は「運動とウォーキングの両方を行っている群」と比べてリスク上昇が認められた。全死亡のHRは1.87(95%CI 1.65~2.12)、要介護認定のHRは1.33(95%CI 1.14~1.54)であった。さらに、身体活動の影響はがん種によって異なる可能性が示された。著者らは、がんサバイバーにおける日常的な身体活動が死亡および要介護認定の予防につながる可能性を示したと結論づけた。とくに高齢者で効果が大きい可能性があり、日常生活での継続的な身体活動の重要性を強調している。本研究の限界として、治療状況が一様でない可能性や、身体活動を自己申告で評価している点、認知・心理状態など未測定因子の影響などを挙げている。(HealthDay News 2026年3月30日)Abstract/Full Texthttps://bmjopen.bmj.com/content/16/2/e104102Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock