看護師の配置不足は入院患者の予後に影響するのか。今回、日本の急性期病院を対象とした研究で、病棟の通常水準を下回る看護師配置、特に日勤帯での不足が、院内死亡や再入院の増加と関連することが示された。約7万7,000件の入院データを解析した結果で、日々の人員配置を適切に維持する重要性が示唆された。研究は、国立保健医療科学院疫学・統計研究部の森岡典子氏、東京科学大学医療本部クオリティ・マネジメント・センターの森脇睦子氏、筑波大学医学医療系社会医学の宮脇敦士氏、英サウサンプトン大学のPeter Griffiths氏らによるもので、詳細は2月25日付で「JAMA Network Open」に掲載された。看護師は医療・ケア従事者の中で最大の職種であり、その配置は医療の質や安全性、医療提供体制の効率に大きく関わるとされる。これまでの研究でも、看護師配置が多いほど院内死亡や有害事象が減少するなど、患者アウトカムが改善することが示されてきた。一方で、実際の病棟では適切な人員配置の判断が看護管理者の経験や判断に依存している面もあり、エビデンスに基づく指針は十分とは言えない。さらに、病院単位で集計した患者対看護師比などの固定的な指標では病棟ごとに異なるケアニーズを十分に反映できない可能性がある。そこで本研究では、病棟ごとの通常水準を基準とした入院期間中の看護師不足を、日勤と夜間の時間帯別に評価し、院内死亡や再入院、在院日数との関連を検討した。本研究は、日本の9病院82病棟の診療報酬請求データ(DPC)と病棟ごとの日々の看護師勤務表データを連結して行った後ろ向きコホート研究である。対象は2019年4月~2020年3月に入院した20歳以上の患者で、ICU滞在日は解析から除外した。対象病棟はいずれも、患者7人に対して看護師1人以上を配置する一般急性期病棟で最も手厚い「7対1看護配置」を採用していた。看護師不足(アンダースタッフィング)は、入院期間中の患者1人当たりの看護提供時間(中央値)が各病棟の通常水準(年間中央値)を下回る場合と定義し、24時間全体、日勤帯、夜勤帯(準夜・深夜)で評価した。解析では院内死亡、退院後7日および30日以内の再入院、在院日数を評価項目とし、傾向スコアマッチング(PSM)や病院・病棟の違いを考慮したマルチレベル回帰モデルを用いて解析した。解析対象は7万7,289件の入院で、患者の平均年齢は69歳、約半数が手術を伴う入院だった。PSM後は、年齢や併存疾患などの患者背景は両群でほぼ同等となった。その後の解析では、24時間全体または日勤帯で看護師不足が生じていた場合、院内死亡率はそうでない場合より高かった(24時間:3.1%対2.8%、日勤帯:3.2%対2.8%)。また、24時間全体で看護師不足があった場合は30日以内再入院率が高く(11.2%対10.5%)、日勤帯で不足があった場合は7日以内再入院率が高かった(2.3%対2.1%)。一方、夜間の看護師不足は院内死亡や再入院と有意な関連を示さなかった。在院日数は、24時間全体、日勤帯、夜間のいずれの時間帯で看護師不足があった場合でも長く、平均在院日数はそれぞれ14.6日対13.8日、14.7日対13.7日、14.1日対13.6日だった。多層モデルによる解析でも同様の結果が得られ、24時間の看護師不足は院内死亡リスクの上昇(調整オッズ比1.22)や30日以内再入院(同1.05)と関連していた。さらに感度解析でも結果は概ね同様で、看護師不足と院内死亡および在院日数の延長との関連は一貫して認められた。著者らは、「急性期病院では、24時間全体または日勤帯で看護師不足が生じている場合、院内死亡や再入院、在院日数の延長と関連する可能性が示された」としている。その上で、日々の看護師配置レベルを継続的に把握し、通常からの逸脱・不足が生じた場合にリリーフ支援などでタイムリーに対応することが、患者アウトカムの改善につながる可能性があると指摘している。なお、本研究の限界として、看護師不足の基準を病棟ごとの年間中央値で定義しており最適な配置水準は不明である点、看護師の経験構成など未測定要因の影響を考慮できていない点、さらに大規模公的病院のデータに基づくため結果の一般化に限界がある点が挙げられる。(HealthDay News 2026年4月13日) Abstract/Full Texthttps://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2845490 Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock